AI検索で出てこない理由、量産では解決しない
ChatGPTに自分の事務所名を入力し、回答を待つ。料金体系については、こちらが説明するまでもなく的確に答えが返ってくる。しかし「評判」や「強み」を尋ねると、途端に歯切れが悪くなる。挙げられるのは別の事務所や医院ばかりで、自分の名前はどこにも出てこない。ホームページは検索すればきちんと上位に出てくる。文章量も、更新頻度も、同業他社に劣っているとは思えない。それなのに、AIに聞かれたときだけ選ばれない。この落差の理由が分からないまま、次に何をすべきか判断できずにいる。
この記事を読むと、検索エンジンには出てくるのにAIの回答には出てこないという現象がなぜ起きるのか、その仕組みを理解できます。そのうえで、月30万〜50万円の見積もりを比較したり、量産型のコンテンツ提案を検討したりする前に、まず自分が何を書けばよいのかを判断できるようになります。結論を先に言うと、本数を増やす対策は必要ありません。必要なのは、月1本、自分にしか書けない判断を書くことです。なぜそう言えるのか、次から順に説明します。
01「本数を増やせば引用されるはず」という思い込みが生まれる場面
ChatGPTやGeminiに事務所名を質問し、料金は答えてくれるが評判や強みは出てこないと分かった段階で、次に多くの経営者・専門職が向かう先がLLMO対策業者への問い合わせです。複数社に見積もりを依頼すると、月額30万〜50万円という金額が並びます。この金額が自社にとって妥当なのかを判断する材料がないまま、提案内容を比較することになります。
提案書に目を通すと、多くの業者がコンテンツの本数と更新頻度を前面に出しています。月に10本、20本といった記事を量産し、継続的に更新することでAIに認識されやすくなる、という説明です。これまでSEOにもLLMOにも本格的に取り組んでこなかった立場からすると、この説明は筋が通っているように見えます。検索エンジンも更新頻度を評価すると聞いたことがあるため、AIも同じように「量」で判断しているのではないか、という推測が生まれます。
ここで迷いが生じます。月30万円のプランは記事本数が少なく、月50万円のプランは本数が多い、という比較の仕方をすると、金額の差がそのまま本数の差に見えてきます。予算を抑えるべきか、多少無理をしてでも本数の多いプランを選ぶべきか。判断の軸が「本数」に寄っていくため、そもそも何を書くかという中身の話が後回しになります。
同時に、税理士や歯科医などの専門職の場合、自分の専門分野についての記事を外部のライターが量産することへの違和感も抱えています。事務所の強みや医院の方針は自分自身が一番よく分かっているはずなのに、それを他人が代筆した記事を大量に並べることで、本当にAIに「選ばれる理由」として伝わるのか。この疑問を業者にぶつけても、「まずは本数を確保することが重要です」という説明だけでは、疑問は解消されないまま契約の検討が進んでいきます。
こうして、本数や更新頻度を評価軸に据えたまま、次の段階である情報収集や業者比較に進んでしまう状況が生まれます。何を書くかではなく、どれだけ書くかで契約先を選ぼうとしている状態です。
02量産しても選ばれない理由――段落単位で見られているという考え方
月30〜50万円という見積もりを前に、多くの担当者が最初に確認するのは「本数」です。月に何本記事を作ってもらえるのか、更新頻度はどれくらいか。金額の妥当性を判断する材料が他にないため、本数の多さを価格に見合う根拠にしてしまいます。ここが判断の分かれ目です。
AIが回答を作るときは、記事全体ではなく、段落やセクションの単位で参照されると説明されています(参考に挙げた記事など)。この考え方に立つと、ある一つの質問に対して、その一段落が直接答えているかどうかが問われます。記事を10本増やしても、それぞれの段落が質問への答えになっていなければ、引用の候補になる段落は増えません。逆に、質問に正確に答えている段落が1つあれば、それは引用の候補になりえます。本数を増やすことが、そのまま引用のされやすさにつながるとは言えません。
もう一つ見落とされがちなのは、案内先のページ自体の強さです。量産したコンテンツの中でリンクを貼っても、リンク先のページが薄い内容であれば、AIがそこを引用する理由がありません。本数を増やす提案は、量を増やせば当たる確率が上がるという発想に基づいていますが、そもそも当たる場所(質問に答えている段落と、その先にある実のあるページ)がなければ、本数を増やしても的に当たりません。
筆者の考えは、量産の提案は受けなくていい、というものです。本数を増やしても、読む人にもAIにも「あなたを選ぶ理由」は増えないからです。月1本でいいので、キーワードから記事を考えるのではなく、実際にお客様と向き合った場面から、自分にしか書けない判断を書くほうがよいと考えています。業者からの見積もりは本数が多いほど高額になる構造のため、「本数を減らしてよい」という考え方は、提案書の中にはなかなか出てきません。
判断を分けるポイントは次の点です。
- 見積もりを比べるとき、本数や更新頻度ではなく、1本ごとの段落が具体的な質問に答える形になっているかを確認する
- 案内先として想定しているページに、質問への答えとして十分な内容があるかを先に確認する
- 「本数を増やす」提案が出てきたら、その本数が何のための本数なのか(どの質問に答えるためか)を業者に聞く
ここで間違えやすいのは、本数の多さを安心材料にしてしまうことです。金額の妥当性を判断する軸が他にないため、本数という数えやすい指標に頼ってしまいますが、判断すべきは段落単位の答え方と、案内先のページの強さです。この2点を確認しないまま本数だけで契約を決めると、記事は増えても引用は増えないという結果になります。
03月1本、何を書けば「選ばれる理由」になるか
量産の提案は、受けなくていいと考えています。本数を増やしても、読む人にとってもAIにとっても「この事務所・医院を選ぶ理由」は増えません。SEOもLLMOも、本質はユーザーが求めていることを提供できているかどうかで決まる、というのが筆者の考えです。本数はその代わりになりません。
筆者が勧めるのは、月1本、キーワードから書くのをやめるというやり方です。手順は次の通りです。
- その月に実際にあった相談・質問・判断の場面を1つ思い出す。検索キーワードは考えない。
- その場面で「誰の、どんな状況の、どんな判断だったか」を書き出す。例えば、料金の質問ではなく、事業承継で迷っていた顧問先に何を優先するよう伝えたか、といった内容です。
- その判断を、事務所名や個人名を伏せた上で、経緯・迷った点・実際に出した結論の順で1本にまとめる。
- 案内先のページ(サービス紹介や事務所案内のページ)が、その判断を裏付ける内容になっているか確認する。案内先が弱いままだと、この1本が引用されても次につながりません。
- 公開後、ChatGPTやGemini、Perplexityで、事務所名や関連する質問を実際に投げて、その記事や判断が回答に反映されているかを記録する。
書く内容が基準を満たしているか、公開前に次の点を確認します。
- キーワードではなく、実際にあった相談・面談から書き始めているか
- 「誰の」「どんな場面の」「どんな判断か」の3つが具体的に書かれているか
- 一般的な制度の説明や解説だけで終わっていないか(それだけなら他の事務所の記事と同じになる)
- 自分がその場で出した判断・結論が、記事のどこかに明確に書かれているか
- 案内先のページが、その判断を裏付ける内容になっているか
効果の確認は、月1本のペースで書き続けた上で、3〜6ヶ月経ってから行います。1本や1ヶ月では、AIの回答に反映されるかどうかは分かりません。確認するときは、料金や制度についての質問だけでなく、評判や強み、どんな相談に向いているかといった質問も投げてみます。料金の質問には出てくるが、それ以外では出てこないという状態が続く場合、書いている内容がまだ判断ではなく説明にとどまっている可能性があります。
04料金は出てもおすすめされない――実際のデータで見る引用の壁
月1本のペースで、顧客の判断を書くという方法に切り替えた場合、それが実際にAIの回答に引用されるかどうかは、公開して数ヶ月経たないと確認できません。ここでは、その確認の前提として押さえておくべきデータを整理します。
Queue株式会社が18業界・計1,800問をGoogleのGeminiに尋ねた調査では、AIの回答の93.1%でWeb検索が発生していたとされています。つまり、AIは質問を受けるたびにゼロから答えを作っているわけではなく、ほとんどの場合、実際にWeb上のページを検索し、その結果を参照して回答を組み立てています。この点だけを見ると、公開したページが検索の対象になってさえいれば、いずれ引用される可能性があるように思えます。
しかし同じ調査によれば、参照ドメインの70.0%は業界内で1回しか引用されていませんでした。特定の大手サイトに引用が集中しているわけではなく、引用元は広く分散しています。これは、検索されることと、繰り返し選ばれる情報源になることが別の話であることを示しています。
さらに、AIの回答だけでユーザーが疑問を解消し、参照元のサイトへ遷移しないまま終わるという状況も指摘されています。いわゆるゼロクリック問題です。これが起きると、ページが引用されていても、そこから事務所や医院への問い合わせにつながらないという事態が生じます。引用される段階と、実際に選ばれて連絡が来る段階の間にも、もう一段の壁があるということです。
ここまでのデータから言えるのは、次の2点です。
- 検索されることと引用されることは別の現象であり、検索に出ているだけでは引用は保証されない
- 引用されたとしても、それがそのまま問い合わせや来院・依頼につながるとは限らない
一方で、ここから先は分かっていないことです。参照ドメインの70%が1回しか引用されない理由が、内容の質によるものか、検索順位によるものか、それとも単に質問のバリエーションが多いために毎回異なるページが参照されているだけなのか、この数値だけでは判断できません。また、月1本のペースで顧客の判断を書き続けた場合に、引用回数がどう変化するかを示すデータも手元にはありません。
したがって、この時点で言えるのは、量産をしても引用が保証されるわけではないという裏付けと、逆に月1本のような少ない本数でも、引用されないと決まっているわけではないということまでです。実際にどちらに転ぶかは、公開後にAIへ自事務所名や自医院名を質問し、回答と出典を記録して確認する以外に確かめる方法はありません。
05次にすること:情報収集の前に、まず1本書いてみる
ここまで見てきた通り、量産や業者比較を急いでも、引用されるかどうかは本数では決まりません。量産の提案は受けなくていい。本数を増やしても、読む人にもAIにも「あなたを選ぶ理由」は増えない。月1本でいいので、キーワードからではなく、実際にお客様と向き合った場面から、自分にしか書けない判断を書くこと。書いたら、ChatGPTやGeminiに事務所名・医院名を質問し、出典として挙がるかを確認してください。それができてから、SEOとの関係や情報収集に進んでも遅くありません。
- 01量産の提案には乗らず、月1本、判断を書くことから始める
- 02テーマはキーワードからでなく、実際の相談・診療・面談の場面から選ぶ
- 03書いたあとはAIに質問して、引用の有無を自分の目で確認する
- 04効果が出るまでの期間や土台(SEO)の話は、次の情報収集の段階で調べる