AIO対策の業者探しの前にやること

ChatGPTに自社名を打ち込んで、検索結果を見た瞬間がある。自社のサービスが出てこない。出てきても、以前終了したキャンペーンの情報や、担当者がすでに変わった問い合わせ先が表示されている。クラウド会計に強い税理士、相続税専門の税理士といった言葉で調べている見込み客がいるはずなのに、競合事務所の名前ばかりが挙がる。歯科医院であれば、症例やFAQを用意している近隣の医院が先に紹介され、自院は見当たらない。AIがどう自社を認識しているかを確認したことで、何かしなければならないという感覚だけが先に立ち、具体的に何から着手すべきかが定まらない状態になる。

この時点で多くの経営者が向かうのは、AIO対策をうたう業者の比較である。しかし、自社の状態を把握しないまま業者の提案を聞くと、提示された施策をそのまま比較することしかできなくなる。予算も情報も限られている中小企業ほど、この進み方は遠回りになりやすい。

この記事を読むと、業者を探す前に何を確認すべきか、既存のページを直すべきか新しく作るべきかをどう見分けるかが分かる。読み終えたときには、次の段階である優先順位の検討に進むための材料が揃っている。

01予算も情報も足りないまま、業者探しを始めていませんか

ChatGPTやGeminiで自社名を検索し、表示されない、あるいは情報が古いことに気づいたあと、多くの人が次にとる行動は「AIO対策 業者」で検索することです。しかし、ここで立ち止まる必要があります。

税理士事務所を例にします。「相続税専門 税理士」「クラウド会計に強い税理士」といった専門領域別の検索でAIに拾われたいと考えたとき、何から着手すればよいか分かっている状態で業者探しを始める人はほとんどいません。自分の事務所がAI上でどう扱われているかもはっきり分からないまま、検索結果に出てくる複数の業者の提案内容を見比べ始めることになります。

歯科医院も同様です。患者が抱える悩みに応じたFAQや症例紹介が必要だと聞いても、現状のサイトにどの程度の情報があり、何が欠けているのかを把握する前に、構造化データやGoogleビジネスプロフィールとの連携をうたう業者の資料を集め始めてしまいます。

この状態には共通点があります。「AIO対策をしなければならない」という危機感は持っているものの、自社の何が問題で、何から手をつければよいかという判断材料がないまま、業者の提案内容を比較する作業に時間を使っているという点です。

この傾向は個別の事情ではありません。ある調査(回答者23人)では、AI検索対策に着手できていない理由として「予算がない」「必要性を感じていない」が同数で最多となり、「情報不足」は3番目という結果が出ています。予算が十分に取れないことと、AIO対策についての情報が足りていないことは、別々の問題ではなく、同時に起きている状態です。情報が足りないために何にいくら使うべきかの見当がつかず、見当がつかないまま限られた予算で何かを始めようとするため、結果として業者の提案を比較することで判断材料を得ようとする、という順序になりやすいのです。

しかし、情報が足りない状態のまま業者の提案を比較しても、判断材料は増えません。増えるのは「どの業者がより魅力的な説明をしているか」という情報だけです。自社がAI上でどう認識されているか、公式サイトの情報がどれだけ古くなっているか、既存のコンテンツに何が足りないかという、本来であれば業者に相談する前に自社で把握しておくべき内容は、業者の提案資料には含まれていません。

予算が足りない、情報が足りないという状態は、業者を探す理由にはなっても、業者を比較する準備ができている理由にはなりません。この二つを混同したまま次の段階に進むと、何を基準に業者を選べばよいかという判断も、結局は業者側の説明に委ねることになります。

ここまでが、AIO対策の必要性を認識した直後に起きやすい状況です。次に必要なのは、業者の比較ではなく、自社の状態を自分で診断することです。

02『原因が分からないまま業者に相談する』と何を失うか

予算も情報も足りない状態で、AIO対策会社に相談することを決めかねている経営者を、実際に止めたことがあります。

その経営者は、既にいくつかの業者から見積もりを取り、提案内容を比較している段階でした。月額の料金表や、記事を何本作るかといった施策の一覧を前に、どれを選ぶべきか迷っていました。そのとき私が伝えたのは、料金や施策の比較をやめることではなく、比較する前に確認すべきことが抜けている、という点でした。

業者が提示する施策は、どれも「何かをすれば改善する」という前提で作られています。しかし、自社がAI上でどう扱われているのか、公式サイトの情報がどこまで古くなっているのか、こうした自社の状態を把握しないまま施策を選ぶと、選んだ施策が自社の問題に対応しているかどうかを判断する材料がありません。結果として、提案内容を比較することはできても、その提案が正しいかどうかを比較することはできなくなります。

ここが判断の分かれ目です。原因を特定してから動くか、施策の比較から入るか。後者を選ぶと、業者の説明を信じるしかなくなります。前者を選べば、業者の提案に対して「それは自社のどの問題に対応しているのか」を問い返せます。

予算が限られる中小企業ほど、この診断を自社で済ませておく必要があります。外部に依頼する前に、以下の項目を確認します。

  1. AI上の認識:ChatGPTやGeminiで自社名・サービス名を検索し、どう説明されているかを記録する
  2. 公式情報の鮮度:公式サイトに掲載されている事業内容・料金・対応地域などが、現在の実態と一致しているかを確認する
  3. 既存コンテンツの有無:サービスページやFAQ、事例紹介などがどの程度揃っているかを棚卸しする
  4. 外部の古い情報:ポータルサイトや過去の掲載記事など、自社の手が届かない場所に古い情報が残っていないかを洗い出す
  5. AIに理解してほしいこと:自社が最も伝えたい強みや専門領域を、一文で言語化できるかを確認する

この5項目を確認しないまま業者に相談すると、「記事を何本作りましょう」「専用ページを作りましょう」といった施策の話が先に出てきます。施策自体が悪いわけではありませんが、自社の何を解決するための施策かが分からないまま契約することになります。

私が実際に止めたいのは、業者を比較すること自体ではなく、原因が分からないまま業者を探し始めることです。予算が少ない場合ほど、最初にお金を使うのではなく、自社で確認できる範囲を整理し、そこで分からなかった部分だけを外部に依頼する。この順番を勧めています。

03既存ページを直すか、新しく作るか。何を見て決めるか

前の節で自社の状態を確認すると、次に出てくる疑問は「既存ページを直すのか、新しく作るのか」です。ここでの判断を誤ると、予算を使う順番そのものを間違えることになります。

現場でよくあるのは、「既存ページを直すより、新しい記事を作ったほうが成果につながりそうだ」という意見です。特に社内やクライアントからは、既存ページの修正を地味な作業と捉え、新規コンテンツの追加を優先したいという声が出ることがあります。

このとき、既存か新規かを先に決めてはいけません。見るべきは、今の状態でAIが判断するために何が足りないかです。

例えば、既存のサービスページに次のような状態があるとします。

  • 提供しているサービス内容が十分に書かれていない
  • サービス名が社内で使っている名称と違う
  • 対応地域や対象顧客が明確でない
  • 古いサービス情報が残っている
  • FAQとサービスページで説明が食い違っている

この状態であれば、新しい記事をいくつ追加しても、根本的な問題は解決しません。この場合は既存ページの修正を優先します。一方で、既存ページがすでに整理されていて、単純にAIが参照できる情報の量が足りないという状態であれば、新規コンテンツの追加を優先することもあります。

つまり判断基準は「既存か新規か」ではなく、「今一番大きな情報のボトルネックはどこにあるか」です。社内で新規コンテンツを優先すべきだという意見が出た場合も、「既存を直したほうがSEOに良いから」という説明はしません。「今ここに新しい記事を追加しても、AIが判断するために不足している情報は埋まりません。まずこのページを直したほうが、次に作るコンテンツも意味を持ちます」という形で、情報の欠損がどこにあるかを示して説明します。

ただし、この基準には例外があります。士業や歯科医院など、既存サイトがそもそも古く、現在の専門分野や対応している患者層が十分に整理されていないケースです。この場合、既存ページを細かく修正するより、基本情報を作り直したほうが早く済みます。地域密着型の事業者であれば、「何を提供しているか」に加えて「どの地域で」「誰に」「どのようなケースで選ばれているか」という情報が必要になりますが、これは既存記事のリライトでは補いにくく、基本情報を整理した新しいページを作るほうが情報構造として分かりやすくなります。

さらに、既存コンテンツそのものがほとんど存在しない場合もあります。この場合は「既存コンテンツを改善しましょう」と言っても、改善する対象がありません。

これらを踏まえると、判断は次の3つに分かれます。

  1. 既存情報がある → まず整理・修正する
  2. 既存情報はあるが、根本的に古い、または構造が悪い → 必要なページを作り直す
  3. そもそも必要な情報がない → 新規に一次情報を作る

「予算がないなら既存記事を直す」というのは基本的な考え方として合理的ですが、絶対的なルールではありません。限られた予算をどこに使えば、一番大きな情報の欠損を埋められるか。この視点で、既存か新規かを決めることになります。

04限られた予算で最初にやること:自己診断と優先順位の決め方

業者を比較する前に、自社の状態を確認しておく作業があります。予算をかけずにできる範囲なので、ここから着手します。手順は次の5つです。

  1. AI上での自社認識を調べる
    ChatGPTやGeminiに、自社名・サービス名・「〇〇(地域)+〇〇(専門分野)」といった自然文で質問を投げ、何と答えるかを記録します。表示されない、情報が古い、competitorと混同されている、といった結果をそのまま控えておきます。ここは誰でもできる作業です。

  2. 公式サイトの情報鮮度を確認する
    サービス内容、対応地域、対象顧客、料金、スタッフ構成などが、現在の実態と一致しているかを確認します。更新日が古いページ、すでに終了したサービスの記載が残っているページを洗い出します。

  3. 既存コンテンツの有無と質を棚卸しする
    サービスページ、FAQ、事例紹介、ブログ記事などを一覧にし、それぞれが「誰に」「何を」「なぜ選ばれるか」を説明できているかを確認します。ページ自体が存在しない領域があれば、それも記録します。

  4. 外部の古い情報を洗い出す
    口コミサイト、ポータルサイト、過去の取材記事など、自社がコントロールできない場所にある古い情報を確認します。修正依頼ができるものとできないものを分けておきます。

  5. AIに理解してほしいことを言語化する
    「クラウド会計に強い税理士として認識されたい」「患者の症状別に選ばれる歯科医院として認識されたい」など、AIにどう認識されたいかを一文で書き出します。ここが曖昧だと、この先の優先順位付けの基準がぶれます。

ここまでは、外部に依頼せず自社で完結できる作業です。経営者本人か、社内でサイトやSNSを管理している担当者が、半日から数日あれば一通り終えられます。

切り分けの基準は次の通りです。

作業 自社でできる範囲 外部に依頼すべき範囲
AI上での自社認識調査 質問を投げて結果を記録する 結果の原因分析、構造化データなど技術的な改善
公式サイトの鮮度確認 古い記載の洗い出し 大規模な修正、サイト構造の見直し
既存コンテンツの棚卸し 一覧化、過不足の確認 コンテンツの書き直し、新規作成
外部の古い情報の洗い出し 検索して見つける 掲載元への修正依頼、削除交渉
AIに理解してほしいことの言語化 自社の言葉で書き出す 第三者視点での検証、表現の調整

見ての通り、「洗い出す」「記録する」「書き出す」までは自社でできます。外部に依頼すべきなのは、洗い出した問題を実際に直す作業や、専門知識が必要な技術的対応です。この切り分けができていないと、業者に相談した際に、何が自社の課題かを説明できないまま、相手の提案をそのまま受け入れることになります。

この自己診断を終えると、自社の課題が「情報が古い」のか「情報が存在しない」のか「認識がずれている」のかが見えてきます。この違いが、次の段階で「既存ページを直すか、新しく作るか」を判断する材料になります。診断をせずに業者比較に進むと、この材料がないまま提案内容を比較することになり、提案の妥当性を判断できません。

確認の目安は、5つの項目それぞれについて、具体的な事実(検索結果の文面、ページの更新日、記事の本数など)が手元に残っているかどうかです。感想ではなく事実が書き出せていれば、自己診断は完了しています。

05優先順位を間違えると何が起きるか。現場で見た実例

優先順位の付け方を誤ると、実際にどのような結果になるかを三つの場面で説明します。いずれも、既存ページの改善を優先したケース、新規作成を優先したケース、一次情報から作り直したケースという異なる判断をした実例です。

一つ目は、既存ページの改善を優先したケースです。あるサービス業の事業者で、サービス内容そのものは既存ページに書かれていましたが、社内で使っている名称とサイト上の表記が異なっていました。対応地域の記載もなく、FAQとサービスページで説明が一部食い違っていました。ここで新しい記事を追加しても、AIが参照する情報の矛盾は解消されません。既存ページの名称・対応地域・説明の整合性を直すことを優先した結果、情報の欠損そのものが埋まりました。新規コンテンツを足す前に、まずこの整理が必要だった例です。

二つ目は、新規作成を優先したケースです。既存ページはすでに整理されており、サービス内容・対応地域・対象顧客の記載に矛盾はありませんでした。問題は、AIが参照できる情報の量そのものが不足していたことです。この場合は既存ページを修正しても埋まる欠損がないため、新しいコンテンツを作ることを優先しました。既存改善が常に先に来るわけではないことを示す例です。

三つ目は、一次情報から作り直したケースです。士業や歯科医院のように、既存サイトがそもそも古く、現在の専門分野や対応している患者層が整理されていない状態でした。この場合、既存ページを細かく直すより、基本情報を一から作り直したほうが早く、情報構造としても分かりやすくなりました。既存コンテンツがほとんど存在しない場合、「改善」という選択肢自体が成立しません。

この三つの実例からいえることは、「予算がないなら既存改善」というセオリーは、既存ページに情報はあるが整理されていない場合には言えますが、情報量そのものが不足している場合や、既存コンテンツが実質存在しない場合には言えないということです。セオリーが当てはまるかどうかは、既存ページの状態を見てから判断する必要があります。

自社の状況をこの三パターンに当てはめる際の目安は、次のとおりです。

  1. 既存ページに必要な情報はあるが、名称・地域・説明に矛盾や古さがある → 整理・修正を優先
  2. 既存ページは整理されているが、AIが参照できる情報量そのものが不足している → 新規コンテンツを優先
  3. 既存コンテンツがほとんど存在しない、または専門分野や対象顧客の情報が丸ごと欠けている → 一次情報を新規に作成

ここで言えるのは、判断基準は「既存か新規か」という二択ではなく、どこに情報の欠損があるかという点です。一方で、この三つの実例だけから、業種ごとの最適解を一般化することはできません。士業や歯科医院でも、既存サイトが整理されている場合は一つ目のパターンに当てはまることがあります。自社がどのパターンに近いかは、前節までの自己診断で洗い出した情報をもとに、個別に確認する必要があります。

06次に進むために:診断を終えたら優先順位を考える

ここまでの自己診断で、自社がAI上でどう見えているか、情報の鮮度や欠損がどこにあるかが見えてきたはずです。次に行うのは業者探しではなく、その材料をもとにした優先順位の判断です。既存ページの整理・作り直し・新規の一次情報作成のどれが必要かは、ボトルネックの場所によって決まります。

POINTS / このコンテンツのポイント
  1. 01業者に相談する前に、自社の状態を自分で確認する
  2. 02「既存か新規か」ではなく「今の情報上のボトルネックは何か」で判断する
  3. 03既存情報があるか、古いだけか、そもそも存在しないかを見分ける
  4. 04判断がついた項目から、予算を使う範囲を決める

まずは、今抱えているお悩みの原因を
正確に突き止めるところから。

ご相談いただいた方には、御社のビジネスや集客におけるお悩みを丁寧にヒアリングし、最適な改善のご提案をさせていただきます。全国どこからでもご相談いただけます。お気軽にご相談ください。