紹介で選ばれてきた理由を言葉にできない税理士へ
顧問先に聞く問いとホームページへの書き分け

ホームページを書き直そうと決め、事務所の強みを書く欄に「親切・丁寧な対応」「迅速な対応」と打ち込んだところで、手が止まる。紹介で回してきた事務所の先生なら、思い当たる場面かもしれません。書いたことにうそはありません。ただ、近くの事務所のホームページにも、同じ言葉が並んでいます。
紹介で選ばれてきた理由とは、顧問先や紹介者が「この事務所に頼もう」「あの先生を紹介しよう」と決めたときの判断の言葉です。この記事は、ホームページに力を入れると決めた事務所の先生に向けて、顧問先や紹介者に聞く問いの一覧と、聞いた言葉をトップ・事務所案内・分野のページのどこに書くかの決め方をまとめたものです。
いちばん言いたいことは、強みは自分で考えるより、選んだ人に「選ぶ前に何に困っていたか」を聞くほうが早く見つかるということです。
01「親切・丁寧」になるのは聞いていないから
自分で考えた強みが「親切・丁寧」のように、どの事務所にも当てはまる言葉になるのは、先生の考える力が足りないからではありません。選んだ側の言葉を、一度も聞いていないからです。
紹介では、顧問先や紹介者の判断の言葉が、口伝えで次の相談者に届いていました。「あの先生は〜だから」という一言が、事務所の代わりに説明してくれていたわけです。一方で、ネットで相談先を探す人には、事務所がホームページに書かない限り、その言葉は届きません。紹介以外の入口のどれから始めるにしても、この言葉を事務所が持っているかどうかが出発点になります。
自分で考える強みは、どこにでもある言葉になる
先生が自分の仕事を振り返ると、日々心がけている姿勢が先に浮かびます。説明を省かない、返事を早くする、数字を間違えない。どれも大切な心がけですが、言葉にすると「親切・丁寧・迅速」に落ち着きます。先生は自分の仕事を「どう取り組んでいるか」という向きから見ているためです。
一方で、選んだ側は事務所を「何に困っていて、何が変わったか」という向きから覚えています。たとえば、決算のたびに慌てていた、銀行に何を聞かれるか不安だった、という自分の出来事と一緒に、事務所の名前を覚えているわけです。この見る向きの違いが、先生の言葉と選んだ側の言葉のずれを生みます。
そのため、強みを机の上で考え直しても、同じ言葉に戻りがちです。**強みは考えて作るものではなく、選んだ人の言葉から見つけるものです。**その人にしか言えないことは本人の頭の中にあり、外から問いを向けないと取り出せません。事務所の強みの場合、その「頭の中」は先生ではなく、顧問先や紹介者の側にあります。
選ばれる理由は困りごとと場面で語られる
選ばれる理由になる言葉とは、「誰が・何に困っていて・どう変わったか」を含む言葉です。「親切・丁寧」は姿勢の言葉で、どの事務所も名乗れます。一方で、場面と相手が見える言葉は、その事務所にしか当てはまりません。
たとえば、一般的なたとえとして、姿勢の言葉を場面のある言い方に置きかえてみます。「丁寧」は「決算前に、数字の見方を一つずつ説明してもらえた」に、「親切」は「創業したばかりで何を聞けばいいか分からなかったのに、聞く前に教えてくれた」に、「迅速」は「税務署から書類が届いた週のうちに、次にやることを決めてもらえた」になります。
3つに共通するのは、相手の状況(決算前・創業直後・書類が届いた週)、困りごと、そして頼んで変わったことが、一つの文に入っていることです。相談者は、自分と同じ状況が書かれた一文を読んで初めて、この事務所なら自分の話が通じると受け取ります。また、どれも先生の側からは出てきにくい言い方です。先生にとっては当たり前の説明が、相手には「聞く前に教えてくれた」という出来事として残っています。選ばれる理由は、先生の当たり前が相手の出来事になった場面に表れます。
聞いた言葉が、相談者の探す言葉になる
場面のある言葉が役に立つのは、読んだ人の心に残るからだけではありません。ネットで相談先を探す人は、自分の困りごとの言葉で探します。これまで検索して比較サイトを見ていた人が、AIに「近くで相続に強い税理士は」と聞く人も増えつつあると見ています。
顧問先も、事務所を選ぶ前は同じ立場の相談者でした。そのため、顧問先が「あのころ困っていた」と話す言葉は、これから相談する人が検索窓やAIに打ち込む言葉と重なります。顧問先から聞いた困りごとの言葉は、そのまま次の相談者が探すときの言葉になります。
AIがこの点をどう説明するかも見ておきましょう。当社で、Google AI Overview(Google検索の結果の上に出るAIの要約)へ「相続や医療など特定分野に強い税理士事務所だと、ネット検索やChatGPTで認識してもらうには、どんな記事や情報発信をすればいいですか?」と聞いて検証してみました。

答えの一部を抜き出したもの。AIの答えは日によって変わります。
図の①で、AIは相談者が悩みを抱えて検索・質問する言い回しと合う内容を引用する、と答えています。ただし、これはAIが自分の仕組みについて答えた内容で、実際にそう動いている証拠ではありません。それでも、相談者の言葉で書くことは人に伝わるうえで理にかなっており、AIのこの答えとも食い違いません。AIが事務所の名前を挙げるときの手がかりは、減った理由の見分け方とAIが名前を挙げる仕組みやAI検索に引用される条件でも確かめられます。
そうすると、次に迷うのは、誰に、いつ、どう切り出せば、顧問先との関係を崩さずに聞けるかです。
02紹介者と最近の顧問先に、ついでに聞く
最初に聞く相手は、紹介してくれた人と、ここ数年で紹介から顧問先になった人がよいでしょう。聞く場は、顧問先なら決算報告や定期の面談の最後の数分、紹介者なら紹介のお礼を伝える機会で足ります。
どちらの場合も、目的を先に伝え、書いてもらうのではなく話してもらう形にすると、相手の負担は小さく、関係の重さも変わりません。
最初は紹介者と最近の顧問先に聞く
紹介者は、事務所を人に説明した言葉をすでに持っています。「あの先生は〜だから」と誰かに勧めたとき、紹介者は相手に合わせて事務所を一言で言い表しているはずです。その言い方は、ネットで探す人に向けた説明にそのまま近いものです。
最近の顧問先は、選ぶ前に困っていたことと、決め手になった場面をまだ覚えています。一方で、付き合いの長い顧問先は、選んだ当時の話より今の満足の言葉が先に出やすく、「長く安心して任せられる」といった姿勢の言葉に戻りがちです。そのため、紹介者からは事務所を一言で表す言葉を、最近の顧問先からは選ぶ前の困りごとを聞く、と分けて考えるとよいでしょう。
人数は、少数から始めるのがよいでしょう。顧問先の決算報告の時期はそれぞれずれるため、ふだんの面談に合わせて聞くと、何人かの話がそろうまでにはある程度の月日がかかります。そのぶん、聞くために新しく時間を取る必要はありません。似た言葉が何人かの話にくり返し出てきたら、一文を作り始める目安です。まずは聞く相手を数人書き出し、次の面談やお礼の連絡の予定と結びつけてみてください。
顧問先は面談の最後、紹介者はお礼の場で
改まって時間をもらうと、顧問先は「何か問題があったのか」と身構えるかもしれません。決算報告や定期の面談の最後の数分なら、いつもの流れの延長で話してもらえます。ただし、いきなり問いから入るのではなく、何のために聞くのかを先に伝えるのがよいでしょう。たとえば「今度ホームページを書き直すので、紹介でうちを選んでくださったときのことを参考にさせてほしいんです。思い出せる範囲でかまいません」と切り出す形です。
一方で、金融機関の担当者や他の士業のように、顧問先ではない紹介者とは定期の面談がありません。そのため、紹介してもらった方との契約が決まり、お礼を伝える電話や、お会いした折に一言添えるのが自然でしょう。たとえば「先日はご紹介ありがとうございました。今度ホームページを書き直すので、うちのことをどんなふうに紹介してくださったか、参考に聞かせていただけますか」という形です。紹介者は事務所のお客さまではないので、聞くのは「何と言って紹介したか」の1問に絞るとよいでしょう。また、紹介された顧問先の相談の中身には触れず、紹介者自身の言い方だけを聞くようにしてください。
どちらの相手にも共通する要点は2つです。「うちのどこがよかったか」と評価を求めず「参考にしたい」とお願いすること、そして答えにくければ流してかまわないと一言添えることです。協力をお願いする聞き方にすると、相手は事務所を採点する立場ではなく、ホームページづくりを手伝う立場で話せます。
書いてもらわず、話してもらう
アンケート用紙を渡すと、相手は文章を考えることになります。書く手間がかかるうえ、文章にする段階で「丁寧に対応していただいています」のような整った言い方に置きかわりがちです。一方で、その場で話してもらえば、相手が普段使っている言い方がそのまま出てきます。
相手に作文をお願いしないことが、負担を小さくし、言い換えの入らない言葉を拾う近道です。ホームページを読むのは先生ではなく、これから相談先を探す人です。その人に届くのは、同じ立場の顧問先が話したままの言葉のほうです。
ただし、聞く相手と場が決まっても、その場で何を聞くかが曖昧だと、「先生は丁寧だから」という答えに戻ってしまいます。答えが具体的になるかどうかは、問いの立て方で決まります。
03「なぜ選んだか」より選ぶ前の困りごと
「なぜうちを選んだのですか」と聞くと、返ってくるのはたいてい建前の言葉です。具体的な言葉を拾うには、選ぶ前の困りごと、決め手になった場面、人に紹介するときの言い方を聞く問いを用意し、答えは相手の言い方のまま残しておくのがよいでしょう。
評価を聞くと、無難な言葉が返ってくる
「なぜ選んだか」は、相手に事務所の評価を求める問いです。目の前の先生を評価するとなると、相手は失礼のない言葉を選びます。その結果、「丁寧だから」「親切だから」という、どの事務所にも言える答えに落ち着きます。
一方で、相手自身の出来事を聞く問いには、無難な答えがありません。「あのころ何に困っていましたか」と聞かれれば、相手は自分が覚えている事実を話すだけなので、場面と言葉がそのまま出てきます。事務所の評価ではなく、相手の出来事を聞くことが、具体的な言葉を引き出す条件です。
それでも答えが「丁寧だから」に戻ることはあります。そのときは否定せずに受け取り、出来事へ戻す一言を返してみてください。たとえば「それは、どんなときでしたか」「そのとき、何に困っていらしたんですか」「うちに頼む前は、どうされていましたか」といった聞き返しです。「丁寧」という言葉の後ろには、相手が丁寧だと感じた具体的な場面が隠れています。
場面ごとに聞く問いの一覧
問いは、相手が事務所と関わった順に、選ぶ前・決めたとき・頼んでから・人に紹介するとき、の4つの場面に分けておくと選びやすくなります。次の表は、各問いで拾える言葉と、その言葉を主に使うページを並べたものです。面談の前に印刷して、手元に置いておくとよいでしょう。
顧問先・紹介者に聞く問いの一覧
| 場面 | 問い | 拾える言葉 → 主に使うページ |
|---|---|---|
| 選ぶ前 | 相談する前、何にいちばん困っていましたか | 困りごとの言葉 → 分野のページ |
| 選ぶ前 | ほかに当たった相談先はありましたか | 違って見えた点 → 事務所案内 |
| 決めたとき | 頼もうと決めたのはどんなときでしたか | 決め手の場面 → 事務所案内 |
| 頼んでから | 頼む前と比べて何が変わりましたか | 変化の言葉 → 事務所案内 |
| 頼んでから | 前ほど気にしなくてよくなったことは | 解けた困りごと → 分野のページ |
| 紹介するとき | 人に紹介するとき何と言いましたか | 一言の説明 → トップ |
| 紹介するとき | どんな人にうちを勧めたいですか | 誰に強いか → トップ |
※余白に相手の答えをそのままメモし、右の列のページを書くときに見返してください。
表の右の列を見ると、トップに使う言葉は「紹介するとき」の問いから、事務所案内に使う言葉は「決めたとき」「頼んでから」の問いから出やすいことが分かります。全部を一度に聞く必要はありません。顧問先には一覧から3つほど選んでおき、面談の最後にまず1つ聞いてみてください。紹介者には「紹介するとき」の行の1問で足ります。
相手の言葉は言い換えずに残す
面談の最後の数分で聞く以上、あとで思い出して書くと言葉が抜け落ちます。その場でメモを取り、要約や言い換えをせず、相手の言い方のまま書き留めるのがよいでしょう。たとえば「数字の見方が分かった」と言われたら、「説明が丁寧」と書き直さずに、そのまま残します。
書き留めた言葉のうち、2種類に印を付けておくと役に立ちます。1つは、何人かの話にくり返し出てくる言葉です。もう1つは、先生が自分では使わない言い方です。先生が自分では言わない言い方こそ、選んだ側の目線が出ている言葉です。
印の付いた言葉がメモにたまってくると、今度はその中のどれを使い、どうまとめれば事務所を表す一文になるのかを決める段階に入ります。
04聞いた言葉を「誰の・どんな悩みに強いか」に
メモに集めた言葉は、そのままでは事務所を表す文になりません。何人かの話にくり返し出てくる相手の種類と困りごとを拾い、「誰の・どんな悩みに強いか」の一文にまとめるのがよいでしょう。ここでいう一文とは、「(誰)の(どんな悩み)に強い」を一行で言い切る、事務所を表す文のことです。
ただし、一文だけでは、どの事務所でも名乗れる宣言にとどまります。その一文が本当だと示すのは、顧問先が話した場面のある言葉です。そのため、一文と一緒に、それを支える言葉もメモから選んでおく必要があります。
何度も出る相手と困りごとを拾う
メモを見返すと、何人かの話に同じ種類の相手と困りごとが出てくるはずです。相手の種類とは、たとえば業種(建設業・医療など)、立場(創業したばかり・事業を継いだばかりなど)、状況(融資を控えている・相続が始まったなど)です。これらに印を付け、くり返し出る困りごとと組み合わせると、一文の候補ができます。
一方で、候補が2つ以上できることもあります。そのときは、これから増やしたい相談に近いものを選ぶのがよいでしょう。ホームページは今いる顧問先への説明ではなく、これから相談してほしい人への案内だからです。
紹介で回してきた事務所ほど、どんな相談も受けてきたため「幅広く対応」と書きたくなるものです。ただし、その書き方では、探す人が自分の相談先だと気づけません。相談者は自分の立場と困りごとの言葉で探すため、紹介以外の入口のどれを選ぶにしても、何でもできると書くより、誰の何に強いかを書くほうが、探す人の目に留まります。
メモから一文と裏付けを作る例
メモの言葉から一文と裏付けができるまでを、たとえばの例で通してみます。次の表は、一般的なたとえとして、創業の相談が多い事務所を想定したものです。上から順に、メモの言葉、印を付けた言葉、一文、裏付け、載せるページと進みます。
たとえば:メモから一文と裏付けを作る流れ
| 段階 | たとえばの中身 | 見るところ |
|---|---|---|
| メモ① | 「創業したてで何を聞けばいいか分からなかった」 | 選ぶ前の困りごと |
| メモ② | 「融資の面談で聞かれることを先に教えてくれた」 | 決め手の場面 |
| メモ③ | 「創業した知り合いには、まずここを勧める」 | 紹介するときの言い方 |
| 印を付けた言葉 | 創業したて/融資 | 何人かの話にくり返し出る |
| 一文 | 創業して間もない会社の、融資の準備に強い | 誰の・どんな悩みか |
| 裏付け | メモ①と②を、言い換えずに使う | 場面と変化が見える |
| 載せるページ | 一文はトップ、裏付けは事務所案内 | 役割で書き分ける |
※すべて一般的なたとえで、実在の顧問先の言葉ではありません。
表で見てほしいのは、一文に使う「創業」「融資」という言葉が、先生の考えではなく、メモの中から拾われている点です。また、裏付けには新しい文を作らず、メモ①と②を顧問先の言い方のまま使っています。一文は印を付けた言葉の組み合わせ、裏付けはメモそのもの、と分けると、机の上で言葉を考え直す時間はほとんど要りません。
まずは手元のメモで、一文の候補を2つほど作り、それぞれに裏付けの言葉を2〜3つずつ並べてみてください。
裏付けには場面と変化のある言葉を選ぶ
裏付けに選ぶ言葉は、選ぶ前にどんな状態だったかという困りごとと、頼んで何が変わったかという変化が見えるものがよいでしょう。さらに、先生が自分では使わない言い方であれば、選んだ側の目線が出ている分、読む相談者にも自分ごととして届きます。
一方で、「丁寧」「親切」のように姿勢だけを表す言葉は、印象が良くても裏付けにはなりません。どの事務所も同じ言葉を名乗れるため、一文が本当だと示す力が無いからです。裏付けは、事務所を褒める言葉ではなく、顧問先に起きた出来事の言葉から選びます。
一文と裏付けの言葉がそろうと、残る問題は、それをホームページのどのページに書くかと、顧問先の言葉をどこまで載せてよいかです。
05トップに一文、事務所案内に裏付けを書く
同じ聞き取りの言葉でも、ページによって使う部分が変わります。一文はトップに、選ばれてきた理由と裏付けの言葉は事務所案内に、相談者の困りごとの言葉は分野のページに書き分けるのがよいでしょう。ページを開いた人が、そこで確かめたいことが違うためです。
ただし、顧問先の言葉を載せる前には、相手が特定されない書き方にし、守秘義務と税理士の広告の決まりに照らして本人の了承を得ておく必要があります。
ページごとに確かめたいことが違う
トップを開いた人は、まず「ここは自分の相談先か」を見ています。長い説明を読む前に判断されるので、トップに置くのは「誰の・どんな悩みに強いか」の一文が合っています。一方で、事務所案内を開く人は「なぜこの事務所を信頼できるのか」を読みに来ています。そのため、事務所案内には選ばれてきた理由と、それを支える顧問先の言葉を書くとよいでしょう。分野のページを開く人は、自分の悩みを分かってもらえるかを確かめているので、相談者の困りごとの言葉が合います。3つの場所を並べると、次のようになります。
聞き取りの言葉をどこに書くか
| 場所 | 相手が確かめたいこと | 書く言葉 |
|---|---|---|
| トップ | ここは自分の相談先か | 誰の・どんな悩みに強いかの一文 |
| 事務所案内 | なぜ信頼できるか | 選ばれてきた理由と裏付けの言葉 |
| 分野のページ | 悩みを分かってもらえるか | 相談者の困りごとの言葉 |
※Googleビジネスプロフィールの「ビジネスの説明」を書くときも、分野のページと同じ困りごとの言葉に合わせると、場所ごとの内容が食い違いません。
表の右の列は、どれも同じ聞き取りのメモから取り出したものです。聞き取りのメモが一つあれば、トップから分野のページまで同じ言葉でつながります。新しく文章を考える必要がほとんど無いのは、そのためです。
また、ホームページを作り直す必要もありません。今のトップの一行目と、事務所案内の一段落を書き換えるところから始めてみてください。
顧問先の言葉は特定されない書き方で
顧問先の言葉を事務所案内に載せるときは、誰の話か分からない書き方にするのがよいでしょう。言葉の後ろに添える立場の説明が細かいほど、地域の人には誰のことか見当がつきやすくなります。業種・地域・時期・規模のうち、いくつも組み合わせると、一つひとつは大まかでも相手が絞り込めてしまいます。
たとえば、一般的な例として「創業2年目の、市内の金型工場の社長」と書くより、「創業して間もない製造業の経営者」のほうが特定されにくくなります。添える説明は、読む相談者が自分と同じ立場だと気づける程度の大まかさにとどめ、会社名・地名・具体的な金額や日付は入れないのが目安です。ただし、どこまでなら特定されないかは、事務所の地域や業種の数によっても変わるため、最後は本人に見せて確かめるのが安全です。
了承と広告の決まりを確かめる
顧問先の言葉を載せるときは、税理士の決まりにも気を配る必要があります。税理士法第38条は、秘密を守る義務を次のように定めています。
税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。
※引用は制定時の条文です。今の条文も、e-Gov法令検索で同じ文であることを確かめました。
国税庁も「秘密を守る義務違反(法第38条違反)」を、税理士法違反行為の一つに挙げています(国税庁「6 税理士法違反行為」)。顧問先が話してくれた言葉も、仕事を通じて知った内容です。そのため、顧問先の言葉は、本人が了承して初めて載せられるものと考えるのが安全です。
もう一つが広告の決まりです。日本税理士会連合会が広告に関する細則で「禁止される広告」を定めていることは、大蔵財務協会の「税のしるべ 電子版」が2018年9月に報じています。ただし、顧問先の声や体験談の掲載がどの項目に当たるかは、細則の原文を見ないと分かりません。そのため、載せる前に、所属する税理士会に細則を問い合わせて確かめるのがよいでしょう。確かめる点は、次の4つです。
顧問先の言葉を載せる前に確かめること
- ☐ 相手が特定されないか:業種・地域・時期・規模の組み合わせで、誰の話か分かってしまわないかを見ます。
- ☐ 事実を超えていないか:結果を約束するような言い方に書き換わっていないかを見ます。
- ☐ 本人の了承を取ったか:載せる言葉と添える立場の説明を、そのまま見せて確認してもらいます。
- ☐ 広告の細則に合っているか:所属する税理士会の細則で、顧問先の声の掲載に当たる項目が無いかを確かめます。
了承が取れない言葉や、細則に当たるか迷う言葉は、無理に載せなくてかまいません。顧問先の言葉をそのまま載せなくても、拾った困りごとの言葉は、トップの一文や分野のページの説明にそのまま生かせるからです。
06まとめ
紹介で選ばれてきた理由は、先生が考えて作るものではなく、紹介者と最近の顧問先の言葉の中にすでにあります。評価ではなく、選ぶ前の困りごとや人に紹介するときの言い方を聞けば、場面のある言葉がメモに集まります。そこから一文と裏付けを選び、ページの役割に合わせて書き分ければ、紹介の外でネットを使って相談先を探す人にも、事務所が誰の何に強いのかを伝えられます。
まずは次の面談で問いを1つ聞き、そのメモをもとに、トップの一文と事務所案内の一段落を書き換えてみてください。


