開業準備中のクリニック・歯科医院の院長へ
地図とホームページで先に決めること

いきなりですが、次のような場面で、AIが何を手がかりに情報を集め、質問に答えているか、ご存じでしょうか。熱が下がらない子どもの親や、詰め物が取れた人が、スマホでAIに「近所で初めて行くクリニック(歯医者)を探している」と打ち込む場面です。当社でGeminiに同じような質問をして検証したところ、AIは候補を挙げるときの手がかりとして、地図の情報、口コミ、医療機関の公式ホームページの3つを挙げました。開業を控えた先生は、こうしたAIの特性を踏まえて、AIに拾われる情報を用意できているでしょうか。
開業時のネットの準備では、Googleマップに載せる自院の基本情報、ホームページ、口コミの受け皿を、開業日までに整えることが大切です。内科・小児科・皮膚科などのクリニックでも歯科医院でも、患者がAIや検索で医療機関を探すときの手がかりは共通しています。その手がかりから逆算すると、先生が先に決めておくこと、整える時期と順番、制作会社の提案書で見るべき点が見えてきます。
制作会社の提案書を読む前に、AI検索の対策として、院名・住所・電話番号・診療時間・休診日の書き方と、得意な診療や来てほしい患者を、院長の言葉で1枚にまとめておくのが先決です。開業日には口コミがまだ無く、自院で用意できる手がかりは、地図の基本情報とホームページの中身に限られるからです。
01開業日は口コミ0件で見られる
医療機関を選ぶときにネットの情報を調べる人は、すでに少なくありません。健康保険組合連合会の国民意識調査では、医療機関を選ぶときの情報源として「インターネットの情報を調べる」がもっとも多く挙がりました。
「インターネットの情報を調べる」との回答が49.4%で
同じ調査で参考にするサイトを見ると、医療専門ではない検索サイト、医療機関のホームページ、医療機関の検索サイト(医療ポータル)が、それぞれ40%を超えていました。ホームページもポータルも、受診先を選ぶ手がかりになっています。
一方で、開業したばかりのクリニックや歯科医院は、そのどこを見られても口コミが1件もありません。この一点が、開業準備で何を先に整えるかを決めます。
提案書を待つか、先に決めるか
開業準備の進め方には、2つの姿があります。制作会社や開業コンサルから提案書が届き、そのページ構成に沿って紹介文や診療案内を考え始める進め方と、自院の基本情報と診療の考え方を先にまとめてから提案書を読む進め方です。どちらでも、開業日にはホームページとGoogleマップがそろいます。
違いが出るのは、そこに何が書かれているかです。前者では、空いた欄が一般的な言い回しで埋まりがちです。一方で後者では、先生が決めた言葉が各所に載ります。先生の準備は、いまどちらに近いでしょうか。
AIが挙げる3つの手がかり
では、患者がAIに相談したとき、AIは医療機関のどこを見ているのでしょうか。当社でGeminiに「近所で初めて行く歯医者やクリニックを探しています。AIにおすすめの院を聞いたとき、AIはどんな情報(地図、口コミ、ホームページ、医療ポータルなど)をもとに候補を挙げているのですか?」と聞いて検証してみました。下の図は、その答えの抜粋に①〜③の印を付けたものです。

Geminiは、地図の基本情報・口コミ・ホームページの中身を候補の手がかりに挙げた(当社で2026年10月21日に検証)
図の①は、診療時間や休診日、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出る医療機関の情報欄)に登録する診療科目で、開業前に用意できます。②は星の数と口コミの件数で、開業日にはまだありません。③は診療内容・専門性や院長の経歴で、ホームページに書いておけます。同じ日にClaudeへ同じ問いを聞いても、地図データ・口コミ・公式ホームページに、医療ポータル・予約サイトを加えた材料が挙がりました。
ただし、この答えはAIが自分の仕組みを説明したもので、候補を選ぶ中身を外から確かめたものではありません。Claudeも答えの冒頭で「各社AIの内部ロジックは非公開です」と断っています。そのため、3つの手がかりは「AIがこう説明している」範囲で受け止めるのがよいでしょう。
この3つは、開業してからも患者に見つけてもらうための地図・ホームページ・口コミの役割とAIの見方の土台であり続けます。開業準備がほかの時期と違うのは、②の口コミが0件から始まる点です。
開業日の口コミは0件
「AIなら、新しくできたクリニックの名前くらい知っているのでは」と思われるかもしれません。Claudeの答えでは、AIの種類ごとの情報源が表で整理され、検索をしないAIの情報源は「学習データ内に何度も登場する院だけ。古い情報や間違いが混ざりやすい」と説明されていました。続けて「検索なしのAIは、地域の小さな院をほとんど知らないこともあります」とも書かれています。
開業したばかりのクリニックや歯科医院は、こうしたAIに名前を知られていない前提で準備するのがよいでしょう。頼りになるのは、地図やホームページを読みに行くAIと、それを見る患者です。そこへ口コミ0件が重なるため、開業日に示せる手がかりは、地図に載せた基本情報とホームページに書いた中身の2つです。
AIが見ているのは、ホームページがあるかどうかではなく、そこに何が書かれているかだと考えています。
そうすると、2つのうち、いちばん先に決められ、しかも後から直しにくいのが、院名や診療時間といった基本情報の書き方です。看板や診察券に一度印刷すると、刷り直すまで変えられないからです。
02最初に決めるのは基本情報の書き方
院名・住所・電話番号・診療時間・休診日の書き方を先生が一つに決め、ホームページ・Googleマップ・医療ポータル・看板・診察券のすべてへ同じものを写すことが、最初の一歩です。
ここでいう基本情報とは、患者が医療機関にたどり着き、受診できるかを判断するための事実のことです。Geminiの答えの①にあった「診療時間、休診日、今営業しているか」が、まさにこれに当たります。
書き方の揺れは患者を迷わせる
開業準備では、自院の情報を書く人が場所ごとに分かれがちです。ホームページは制作会社、Googleマップは開業コンサル、医療ポータルは各社の担当、看板と診察券は印刷会社という具合です。そうすると、ビル名を入れるかどうか、電話番号の区切り方、昼休みを「13:00〜14:30」と書くか「午後は14:30から」と書くかが、場所ごとにずれやすくなります。
患者から見れば、ホームページと地図で診療時間が違えば、どちらが正しいかは電話で確かめるしかありません。たとえば、夕方に子どもの熱が上がった親が「今から診てもらえる小児科」を探す場面や、土曜の朝に歯が痛み出した人が「土曜に開いている歯医者」を探す場面では、電話をかける手間そのものが、ほかの医療機関を選ぶきっかけになりえます。
基本情報の揺れは、この医療機関の情報は確かなのか、という迷いを患者に生みます。
「情報シート」にまとめる項目
揺れを防ぐには、正しい書き方を1か所に決めておき、どこへ載せるときもそこから写すのが確実です。決めておきたい項目は、次のとおりです。
- 院名の正式表記と読み —— 「医院」「クリニック」「歯科」の付け方や、法人名を入れるかまで一つに決めます。
- 住所 —— ビル名と階まで含め、「○丁目○番○号」と「○-○-○」のどちらで書くかもそろえます。
- 電話番号 —— 代表と予約用で番号が違うなら、どちらをどこに載せるかも決めます。
- 診療時間と昼休み —— 曜日ごとの時間に加え、受付を締める時刻も書きます。
- 休診日と祝日の扱い —— 祝日のある週や年末年始をどう扱うかまで書きます。
- 診療科目 —— 内科・小児科、一般歯科・小児歯科など、地図のカテゴリやポータルの科目欄に入れる言葉です。
- 駐車場・バリアフリー —— Geminiの答えの①にも、Googleビジネスプロフィールの項目として「バリアフリー対応の有無」が挙がっていました。
これらを1枚にまとめたものを、この記事では「情報シート」と呼びたいと思います。

基本情報は先生がまとめた1枚から写すことで、どの場所でも同じ書き方になります。
先生が表計算のファイルかA4の紙1枚に書き、内装の打ち合わせが一段落した時点で、制作会社、Googleマップの登録をする人、医療ポータルの担当、看板と診察券の発注先へ同じファイルを渡してみてください。診療時間などを変えるときは、まずこの1枚を直し、そのあとで各所へ伝える順番にしておくとよいでしょう。
決めるのは先生、写すのは任せる
「住所の書き方くらい、制作会社がそろえてくれる」と思われるかもしれません。たしかに、ホームページの中の表記は制作会社がそろえてくれるでしょうし、地図やポータルの登録までまとめて引き受ける制作会社や開業コンサルもあります。ただし、どの書き方を正しいものとするかは、自院で決めないと定まりません。
そのため、決めるのは先生、写す作業は任せてよい、と分けて考えるのが現実的です。「情報シート」を渡して「この通りに写してください」と頼めば、先生の手間は1枚を書く分だけで済みます。開業後に診療時間を変えたときも、1枚を起点にすれば、ホームページだけ直って地図とポータルが古いまま残る、という食い違いを防ぎやすくなります。
ただし、任せるときに一つ気を付けたいのが、Googleマップの登録を誰のアカウントで行うかです。開業コンサルや制作会社が自分のアカウントで登録すると、開業後に自院で情報を直しにくくなるおそれがあります。登録の時期とあわせて、権限を自院で持てる頼み方にしておきたいところです。
もっとも、基本情報がそろって伝わるのは、「どこにあり、いつ開いているか」までです。それだけでは、近くのほかの医療機関と見分けがつきません。患者が選ぶ理由になるのは、何を得意とし、どんな患者に来てほしいかという中身です。
03診療の考え方は院長の言葉で書く
得意な診療、来てほしい患者、診療で大事にしていることは、提案書のページ構成を埋める前に、先生が自分の言葉で書き出しておくのがよいでしょう。Geminiの答えの③でも、ホームページについて「診療内容・専門性」と「院長・医師の経歴・資格」が挙がっていました。
患者に選ばれる理由になる考えは、先生の頭の中にしかありません。制作会社はそれを聞き出して整えることはできても、代わりに作ることはできないからです。
一般論の文では見分けがつかない
どのクリニックにも当てはまる一般論の文は、患者にとってもAIにとっても、選ぶ理由になりません。近くの医療機関のホームページに同じ言葉が並んでいれば、見分ける手がかりにならないからです。一般論をいくら増やしても選ぶ理由にならない点は、記事を量産してもAIの答えに出てこない理由と同じです。
違いは、短い例で比べると分かりやすくなります。たとえば、次のような書き方です。
- 一般論の文 —— 「患者様一人ひとりに寄り添った、丁寧な診療を心がけています。」
- 内科の院長の言葉 —— 「勤務医の頃に生活習慣病の外来を長く担当し、通院が途切れてしまう人を多く見てきました。そのため、初診では暮らしの時間割を伺ってから、続けやすい通い方を一緒に決めます。」
- 歯科の院長の言葉 —— 「前の勤務先では子どもの患者さんを多く担当してきました。初めて来た日は治療を急がず、器具に触れてもらう時間を取ります。」
※ どれも書き方の違いを見せるための一般的な例です。
後の2つからは、どんな患者に、何をする医療機関かが読み取れます。院長の言葉とは、飾った文ではなく、経験と、そこから決めた診療のやり方を書いた文のことです。
開業を決めた理由を言葉にする
これから開業するクリニックや歯科医院には、すでに続いている医療機関には無い材料があります。なぜこの地域で開業を決めたのか、前の勤務先で何に力を入れてきたのか、という2つです。どちらも先生が話せばすぐに出てくることですが、提案書のページ構成から考え始めると、文章に入らないまま開業日を迎えがちです。
提案書には「院長挨拶」「診療案内」「設備紹介」といったページの枠が並んでいるはずです。ただ、それは形であり、その中に入れる意味ではありません。ページの枠を埋める前に、「情報シート」の裏面で次の3つの問いに各3〜4行で答えてみてください。
- 得意な診療は何か —— 開業を決めた理由や、前の勤務先でいちばん力を入れてきた診療を、具体的な治療や病気の名前で書きます。
- どんな患者に来てほしいか —— 夕方しか来られない共働きの親子、仕事帰りに通いたい人など、思い浮かぶ患者の姿をそのまま書きます。
- 診療で大事にしていることは何か —— 説明の仕方や通いやすさなど、自院として譲らない点を、実際に行うことの形で書きます。
書いた裏面は、制作会社との最初の打ち合わせに持っていくとよいでしょう。制作会社は3つの答えから院長挨拶や診療案内の文章を組み立てられ、空欄を一般論で埋める必要がなくなります。
ガイドラインの確認役を先に決める
ただし、医療機関のホームページは、医療広告の決まりと無関係ではありません。厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)は、医療機関のウェブサイトも規制の対象にしており、決められた要件を満たした場合に限って、広告できる事項の限定が外れる(限定解除)としています。具体的な表現の扱いは、同じ日に出た事例解説書(第6版)に例がまとまっています。何が書けて何が条件つきかは、厚生労働省のサイトで最新版を開いて確かめるのが確かです。
一方で、開業準備で困りやすいのは、規制の中身より、誰がいつ確かめるかが決まっていないことです。文章が出来上がった最後に先生が初めて読むと、直しが公開の直前に重なり、開業日に間に合わせるために確認が駆け足になりかねません。そこで、最初の打ち合わせで次の2つを決めておくとよいでしょう。
- 確かめる人 —— 制作会社がガイドラインに照らして下読みをするのか、先生だけが読むのかを決めます。載せてよいと最後に決めるのは先生です。
- 確かめる時期 —— 院長挨拶と診療案内の文が出そろった時点で一度、公開の前にもう一度、のように回数と時期を日程表に入れます。
確かめるときは、得意な診療を書くことと、ほかの医療機関より優れていると言うことを分けて読むと迷いが減ります。力を入れている治療や大事にしていることを事実と考えで書くのは、自院を知ってもらうための説明です。一方で、ほかの医療機関と比べて優れていると言う広告(比較優良広告)は、ガイドラインで禁止される広告に挙げられています。「地域一番」「No.1」のような最上級の言い方は、事実であっても使えません。

先生の言葉を打ち合わせに持ち込み、ガイドラインの確認を通してからページに載せます。
載せる中身と確認の段取りが決まれば、残るのは、それをいつ世に出すかです。地図の登録、ホームページの公開、口コミの方針は、開業日から逆算して時期を並べると、提案書のスケジュールと突き合わせられるようになります。
04開業日までに整える順番
開業日までの準備は、まず「情報シート」の表面と裏面、口コミの方針を同じ時期に決めます。そのあと、ホームページのURLと電話番号が使える状態になってから、Googleマップに登録する順で並べるのがよいでしょう。地図もホームページも、「情報シート」を写すところから始まります。1枚が無いまま登録や公開を進めると、あとで直す場所が増えてしまいます。
一方で、口コミの方針は、ホームページや地図の出来上がりを待たずに決められます。決める材料は、先生が患者にどう接したいかという考えで、診療の考え方を書く裏面と同じところから出てくるからです。
地図の登録はURLと電話がそろってから
「地図は早く登録したほうがよいのでは」と思われるかもしれません。Googleの公式のヘルプ「開業日を追加する」によると、開業日は年と月で1年先まで入れられ、日付を入れてオーナー確認(その医療機関の持ち主だと示す手続き)を行うと、開業日の90日前からGoogleにプロフィールが表示されるようになります。早く登録しても、患者の目に触れ始めるのは開業日の90日前からということです。
また、Googleビジネスプロフィールのコミュニティに載っている開業前の登録の解説では、開業予定日はオーナー確認の前に入れること、ウェブサイトのURLと電話番号はすでに使える状態にしておくことが勧められています。こちらはGoogleの公式のヘルプではないため、登録の前に画面の案内とあわせて確かめるのがよいでしょう。
そうすると、地図の登録より前に、ホームページのURLが開けることと、自院の電話がつながることが要ります。ホームページの全ページが出来上がっている必要まではなくても、URLが決まって開ける状態にしておくと、登録の段取りが止まりにくくなります。
もう一つ、登録を誰のアカウントで行うかも、このステップで決めておきたいところです。開業コンサルや制作会社に作業を頼む場合も、自院で管理するGoogleアカウントで登録してもらえるかを、頼む前に聞いておくとよいでしょう。
時期と、先生が決めること、任せてよい作業を並べると、次のようになります。提案書のスケジュールと横に並べて見てみてください。
開業日までに整える順番
| 時期 | 先生が決めること | 任せてよい作業 |
|---|---|---|
| 内装の打ち合わせ中 | 情報シート(表と裏)を書く | 各所へ同じ1枚を配る |
| 1枚と同じ頃 | 口コミの頼み方と返し方を決める | 受付での声かけを段取りする |
| 最初の打ち合わせ後 | 載せる文をガイドラインで確かめる | ページを作り、URLを開ける |
| 電話とURLが使える頃 | 地図を自院のアカウントで登録 | 開業予定日を入れて登録する |
| 開業日のあと | 月に一度、出方を見て直す | 記録を表計算に付ける |
※ 時期は順番の目安です。地図のプロフィールは、開業日を入れてオーナー確認を行うと開業日の90日前から表示されます(Googleの公式のヘルプ)。それ以外の日程は、制作会社の日程と突き合わせて決めてください。
表の1行目と4行目は、同じ1枚の表面を写す作業です。先生の手が要るのは「どれを正しい書き方とするか」を決める1行目で、4行目は、登録した内容が1枚と同じかを確かめるだけで済みます。
口コミの方針は裏面と一緒に決める
「口コミは開業すれば自然に集まる」と思われるかもしれません。ただし、当社でGeminiに聞いた答えの②では、星の数だけでなく、「説明が丁寧」「待ち時間が短い」といったレビュー本文の中身も手がかりに挙がっていました。そうすると、件数より先に、届いた口コミに自院がどう返しているかも、これから医療機関を探す患者の目に触れることになります。
口コミが届いてから返し方を考えると、その場の気持ちで書いてしまいがちです。一方で、件数を急いで見返りと引き換えに頼むことは、Googleのヘルプで禁止されています。
虚偽のエンゲージメントと見なされ、固く禁じられています
Googleビジネスプロフィールのヘルプでは、口コミの投稿や低い評価の削除と引き換えに、割引や無料サービスなどの見返りを渡すことが禁じられています。Googleのマップのユーザー投稿コンテンツに関するポリシーも、お金や物を対価に書いてもらった口コミを禁止される内容に挙げています。
そのため、情報シートの裏面を書くときに、口コミについて次の4つも書き足しておくとよいでしょう。
- お願いのしかた —— 内科や小児科なら会計のとき、歯科なら治療の区切りの日に受付で一言添えるなど、誰がいつ声をかけるかを決めます。
- 返信の方針 —— 誰が、何日以内に返すかを決めます。患者が特定されるような症状や治療の内容には触れません。
- 低い評価への対応 —— 言い分を書くより、受け止めの言葉と自院の取り組みを短く返す形をそろえます。
- 見返りで集めないこと —— 割引や無料サービスと引き換えに頼まないことを、開業前の研修でスタッフと共有します。
ただし、口コミの扱いは地図の上だけでは終わりません。ホームページに患者の声や口コミを載せるかどうかは、医療広告ガイドラインの最新版で扱いを確かめ、ガイドラインの確認役に読んでもらってから決めるとよいでしょう。
医療ポータルも情報シートから写す
医療ポータル(医療機関の検索サイト)は、健康保険組合連合会の調査でも、医療機関のホームページと並んで多くの人が参考にするサイトに挙がっていました。当社で聞いた同じ日のClaudeの答えでも、医療ポータル・予約サイトが材料の一つに挙がっています。
どのポータルに載せるかは、費用と自院の方針で決めることです。どこに載せる場合も、基本情報を「情報シート」から写してもらえば、地図やホームページと食い違うことは防ぎやすくなります。先生が決めることは、載せるかどうかと、写した内容が1枚と同じかを確かめることの2つです。
順番と時期が決まると、提案書を手にしたとき、スケジュールのどこが自院の段取りと合い、どこが抜けているかを見比べられるようになります。
05提案書で確かめることと任せる範囲
提案書は、ページ数やデザイン、費用で比べやすくできています。一方で、自院の基本情報と診療の考え方をどう取り込むか、地図の登録の権限が誰に残るかは、書かれていないことが少なくありません。
提案書は見た目より、情報シートの表と裏をどう受け取り、開業後も自院で直せる形にしてくれるかで読むのがよいでしょう。開業日に患者とAIが手がかりにするのは、その中身だからです。
提案書で確かめる5つの点
複数の提案書を机に並べたら、次の5つが書かれているかを確かめてみてください。書かれていない点は、3列目の聞き方で打ち合わせのときに尋ねると、各社の答えを同じ軸で比べられます。
提案書で確かめる5つの点
| 確かめること | なぜ要るか | 打ち合わせでの聞き方 |
|---|---|---|
| 基本情報の取り込み方 | 情報シートから写すかで揺れが決まる | 情報シートの通りに各所へ写せますか |
| 院長の話を聞く時間 | 診療の考えは院長にしか書けない | 院長に話を聞く時間は何回ありますか |
| ガイドラインの確認役 | 直しが公開直前に重なるのを防ぐ | 下読みはどなたが、いつしますか |
| 地図の登録の権限 | 自院で持たないと直しにくい | 地図は自院のアカウントで登録しますか |
| 公開後の更新の担い手 | 診療時間の変更をすぐ載せるため | 開業後の修正は誰が何日で直しますか |
※ 答えは提案書の余白に書き留めておくと、あとで各社を見比べやすくなります。
5つのうち、開業後に効いてくるのは4行目と5行目です。診療時間を変えたり、夏季休診を知らせたりするたびに制作会社や開業コンサルへ頼む形だと、ホームページだけ直って地図が古いまま残る、という食い違いが起きやすくなります。
もう一つ、AIの答えに自院が載ることを約束する提案を受けたときは、「AIに必ず表示」という保証が成り立つのかを確かめてから判断するとよいでしょう。
先生が持つこと、任せてよいこと
開業準備で時間が無くても、先生が手放さないほうがよい範囲は限られています。分ける基準は、先生の判断が要るかどうかです。
- 先生が持つこと —— 「情報シート」の表面と裏面、口コミの返信の方針、医療広告ガイドラインに照らした最終確認、地図のアカウントの持ち主になることです。
- 任せてよいこと —— デザイン、ページの制作、写真の撮影、地図やポータルへ1枚を写して登録する作業です。
前者は、先生が決めないと誰も決められないものです。後者は、決まったことを形にする作業なので、得意な人に頼むほうが早く進みます。決めることを自院に残し、作業を任せれば、内装や医療機器の準備と並行しても、先生の手間は1枚を書くことと確かめることに収まります。
開業後は月に一度AIに聞いてみる
開業したあとは、地図とホームページに載せた内容が、AIの答えにどう出ているかを確かめる番です。先生か事務の担当が、月末など日を決めて、同じ問いをChatGPTとGeminiに聞いてみるとよいでしょう。
問いは、患者が打ち込みそうな言葉で2〜3個に決めておきます。たとえば小児科なら「(地域名)で土曜に開いている小児科」、皮膚科なら「(地域名)で子どものアトピーを診てくれる皮膚科」、歯科なら「(地域名)で子どもを怖がらせない歯医者」のような形です。
答えを見たら、表計算のファイルに、日付・問い・AIの名前・自院の名前が挙がったか・説明が正しいかを一行ずつ書きます。開業してすぐは名前が挙がらなくても不思議ではありません。診療時間や休診日が違って説明されていれば、まず「情報シート」と地図・ホームページの表記が同じかを見直すのがよいでしょう。
06まとめ
開業したばかりのクリニックや歯科医院は、口コミが0件のところから始まります。そのぶん、先生が開業前に決めた言葉が、地図とホームページを通して、そのまま患者とAIの目に触れます。基本情報の書き方も、診療の考え方も、口コミへの向き合い方も、制作会社が代わりに決められるものではありません。
一方で、決めたあとの作業は任せてかまいません。提案書を読む前に1枚を書いておけば、各社の提案のどこが自院の段取りと合い、どこが抜けているかを、同じ軸で見比べられるようになります。まずは内装の打ち合わせの合間に「情報シート」の表面を書き、裏面の3つの問いへの答えと口コミの4つの方針を書き足して、制作会社との最初の打ち合わせに持っていくことから始めるのがよいでしょう。


