得意分野のお客様が紹介では来ない税理士へ
分野で探す人の5つの入口と確かめ方

相続の手続きや医療機関の顧問に詳しいのに、紹介で届くのは法人の記帳の相談ばかり。そう感じている税理士事務所の先生に向けて、紹介では得意分野のお客様を選べない理由と、分野で相談先を探す人がどこから事務所を見つけているかをまとめました。読み終えるころには、事務所が次に整える入口の候補が1つ挙がっている状態を目指します。

この記事でいう入口とは、相続や医療機関など分野で相談先を探す人が、事務所の名前を初めて目にする場所のことです。具体的には、Google検索、ChatGPTなどのAI、税理士の紹介サイト、Googleマップ、他士業や同業からの紹介の5つを指します。

紹介で届く相談の分野は、紹介してくれる人の顔ぶれで決まるため、事務所の側からは選べません。一方で、分野で探す人は、5つの入口のどこから来ても、その分野の困りごとに事務所がどう答えるかを手がかりに判断します。そのため、入口を増やす前に、5つの入口で得意分野が伝わっているかを確かめ、伝わっていない入口を1つだけ選んで整えるのがよいでしょう。

01紹介で来る分野は紹介者で決まる

紹介で来るお客様の分野は、事務所の努力ではなく、紹介してくれる人の顔ぶれで決まります。

紹介者が出会う困りごとしか届かない

紹介とは、顧問先や付き合いのある人が、自分の周りで起きた困りごとを事務所に回してくれる仕組みです。そのため、届く相談の種類は、紹介者の業種や付き合いの範囲で決まります。たとえば、法人の顧問先が多い事務所に届く紹介は、その顧問先の取引先や知人の会社の相談に寄りやすいでしょう。顧問先の業種も、付き合いのある士業や金融機関の顔ぶれも、事務所の側からは選べません。

さらに、紹介者が事務所の得意分野を知らなければ、分野の相談は回ってきません。

たとえば、相続に詳しい事務所でも、顧問先の社長がそれを知らなければ、知人から相続の相談を受けたときに思い出すのは別の事務所かもしれません。紹介で届くのは、紹介者の周りの困りごとと、紹介者が知っている事務所の得意分野が重なるところだけです。 その外側には、紹介者を通らずに分野で相談先を探している人がいます。図にすると次のようになります。

左の紹介者の周りの困りごとだけが事務所に届き、右の分野で探す人は紹介者を通らず別の入口を探している図

紹介で届くのは紹介者の周りの困りごとだけで、分野で探す人には別の入口が要ります。

図の右側にいる、分野で探す人に届く道は、紹介の中にはまだありません。

事務所の紹介を分野で書き出す

この偏りが自分の事務所にも当てはまるかは、ここ1〜2年の紹介を書き出してみると確かめられます。顧問先の一覧や受付の記録をもとに、1件を1行で、紹介元(顧問先・他士業・金融機関など)、分野(相続・医療機関・飲食店・法人の記帳など)、増やしたい得意分野と合うかどうか、の3つを並べてみてください。

たとえば、法人の顧問先からは法人の相談が、付き合いのある司法書士からは登記に絡む相談が来ている、というように紹介元ごとに分野がそろっていれば、偏りは紹介者の顔ぶれで説明できます。偏りの理由が分かれば、紹介に求めることと、紹介の外で得意分野の相談者に見つけてもらうことを分けて考えられます。

ただし、紹介の外で分野から探している人は、紹介者のように事務所の名前を知っているわけではありません。そのため、紹介者を増やす工夫より先に、紹介者の先にいる相談者が何に困り、どんな言葉で探し始めるのかを知ることが出発点になります。

02分野で探す人は困りごとの言葉で探す

分野で税理士を探す人は、「相続に強い税理士」のような分野名より先に、自分の困りごとの言葉で探し始めます。相談者は、その困りごとがどの専門家の仕事なのかを知らないまま探し始めることがあるからです。

「相続 税理士」より先に困りごとがある

たとえば、親が亡くなって手続きに追われている人は、最初から「相続税に強い税理士」とは調べないでしょう。「親が亡くなった 手続き 何から」のように、目の前の困りごとをそのまま打ち込むほうが自然です。その時点では、税理士の仕事なのか、司法書士や弁護士の仕事なのかも分かっていません。

探す場所も変わりつつあります。これまでは検索して比較サイトを見ていた人が、AIに「近くで相続に強い税理士は」と聞く人も増えつつあると、当社では見ています。AIには会話のように聞けるため、困りごとを長い文のまま打ち込む人もいるでしょう。そうすると、分野名だけを掲げた事務所のページは、困りごとの言葉で探す人の目に入りにくくなります。

Googleも、検索の基本をまとめた手引き「Google Search Essentials」で、人が探すときに使う言葉で書くよう勧めています。

Use words that people would use to look for your content

出典:Google Search Essentials

要旨は「人がそのコンテンツを探すときに使う言葉を使う」で、事務所が使う専門の言葉ではなく、探す人が使う言葉で書くよう勧めています。分野名だけでなく、相談者が口にする困りごとの言葉で書くことが、検索でもAIでも見つけてもらう前提になります。 まずは、得意分野の相談者が最初の相談で口にした言葉を、言い換えずに3つほど書き出してみてください。

探し始める時と相談先が分野で違う

困りごとの言葉だけでなく、探し始めるきっかけや最初に頼る相手も、分野によって違うかもしれません。たとえば、相続なら家族が亡くなったあとに、まず金融機関や司法書士に相談する人もいるでしょう。医療機関なら開業や承継の準備の段階で、飲食店なら開店の前後に、クラウド会計なら記帳の手間に困ったときに探し始める、といった違いが考えられます。

ただし、これは一般的な見方で、事務所の分野で実際にどうだったかは事務所の記録でしか分かりません。書き出した言葉に加えて、得意分野の相談者が何をきっかけに探し始めたか、税理士の前に誰に相談したか(金融機関・他士業・AIなど)も書き添えてみてください。

最初に相談した相手は、次に整える入口を選ぶときの手がかりになります。 その欄に他士業や金融機関が並べば、その人たちが分野の入口になっています。一方で、検索やAIで探してきた人がいれば、どの言葉で探し、事務所のどこを見て問い合わせたかが手がかりになります。そうすると、困りごとの言葉で探す人が、それぞれの入口で何を見て「詳しい事務所だ」と判断しているのかが気になってきます。

03どの入口でも見られるのは事務所の言葉

分野で探す人の入口は、検索・AI・紹介サイト・地図・他士業や同業からの紹介の5つです。どの入口から来ても、相談者が判断に使うのは、その分野の困りごとに事務所がどう答えるかを、事務所が言葉にした中身です。

ここでいう事務所が言葉にした中身とは、ホームページや紹介サイトに書いた文と、紹介者に伝えてある得意分野の説明のことです。探す人もAIも、事務所に会う前に手にできるのはこうした言葉だけです。「相続に強い」という一言は誰でも書けるため、困りごとへの答え方や扱ってきた相談の中身でしか、詳しさは見分けられません。

分野で探す人の入口は5つ

入口ごとの手間や費用の違いは紹介以外の入口の選び方に関わりますが、ここで見たいのは、どの入口でも探す人が何を見て「詳しい」と判断するかです。5つの入口を、探す人が見るものと、分野が伝わる手がかりで並べると次の表になります。

分野で探す人の5つの入口と、分野が伝わる手がかり

入口 探す人が見るもの 分野が伝わる手がかり
検索 困りごとで調べて出たページ 困りごとへの答え方が書かれている
AI AIが挙げた名前と理由 分野の実績や答え方が文字で読める
紹介サイト 登録内容と口コミ 得意分野と扱った相談が書かれている
地図(Googleマップ) 事務所の情報の欄 カテゴリやサービス、説明文の記載
他士業・同業の紹介 紹介者からの口頭の説明 紹介者が得意分野を言葉で説明できる

※国税庁「税理士をお探しの方へ」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/find.htm)は税理士を探す人に日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトを案内しており、公的な名簿も探す人の通り道になりえます。

表の右の列を見ると、5つの入口のどれでも、手がかりは事務所の得意分野を表した言葉です。他士業からの紹介は口頭の説明ですが、その説明も、事務所が紹介者に伝えた言葉が元になります。分野名を掲げることより、分野の困りごとにどう答えるかを事務所の言葉にしておくことが、5つの入口に共通する土台です。

AIの答えも「一言では足りない」

AIの入口でもこの見方が当てはまるかを、当社で、Google AI Overview(Google検索の結果の上に出るAIの要約)へ「相続や医療など特定分野に強い税理士事務所だと、ネット検索やChatGPTで認識してもらうには、どんな記事や情報発信をすればいいですか?」と聞いて検証してみました。次の図は、その答えの一部に①②の印を付けたものです。

分野の詳しさについてAIが答えたこと(Google AI Overview 2026/10/16「相続や医療など特定分野に強い税理士事務所だと、ネット検索やChatGPTで認識してもらうには、どんな記事や情報発信をすればいいですか?」の答えに印を付けたもの)

AIは、分野名だけでは足りず、実績を文字で示すよう答えました。

図の①で、AIは「相続に強い」「医療に強い」という抽象的な言葉だけでは認識しない、と答えています。②では、その代わりに具体的な実績を文字で示すよう挙げています。これはAIの仕組みを確かめたものではなく、AIがこう答えたという記録です。それでも、分野名を掲げるだけでは足りないという点は、表の読み取りと一致します。

AIが見ているのはホームページがあるかどうかではなく、そこに何が書かれているかだ、と考えています。ただし、AIが事務所の名前を挙げるときの手がかりは、事務所のホームページだけとは限りません。そのため、紹介サイトの登録内容や他士業のページでの書かれ方も、分野の入口に含めて見ておくとよいでしょう。

そうすると、事務所がそれぞれの入口で今どう見えているのか、得意分野が伝わっているのかを、一つずつ確かめてみる必要が出てきます。

04入口ごとに分野が伝わっているか確かめる

整える入口を決める前に、5つの入口で事務所が今どう見えているかを確かめるのが先です。入口ごとに事務所の状態は違うため、確かめないまま手を付けると、すでに分野が伝わっている入口に限られた時間を使ってしまいます。

確かめるのに特別な道具は要りません。相談者と同じ言葉で調べ、相談者が見るのと同じ画面を見れば足ります。

5つの入口を順に見てみる

確かめるときは、どの入口にも同じ2つの問いを当てていくとよいでしょう。1つは、相談者の困りごとの言葉で事務所が見つかるか。もう1つは、見つかった先に、分野の困りごとへの答え方が書かれているかです。次の項目ごとに「伝わっている」「伝わっていない」の印を付けてみてください。

5つの入口で確かめること

  • ☐ 検索:書き出しておいた相談者の言葉で調べ、事務所のページが出るか、そこに困りごとへの答え方が書かれているかを見ます。
  • ☐ AI:地域名と得意分野を入れてChatGPTなどに税理士を聞き、事務所の名前が挙がるかを見ます。挙がらなければ、代わりに挙がった名前も書き留めます。
  • ☐ 紹介サイト:登録内容に、得意分野と扱ってきた相談が書かれているかを見ます。
  • ☐ 地図(Googleマップ):カテゴリやサービス、説明文に、得意分野が相談者の言葉で書かれているかを見ます。
  • ☐ 他士業・同業からの紹介:付き合いのある相手が、事務所の得意分野を一言で説明できるかを思い浮かべます。
  • ☐ 公的な名簿:日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで、事務所の情報がどう載っているかを見ておきます。

※最後の公的な名簿は、5つの入口とは別の通り道です。国税庁は「税理士をお探しの方へ」というページで、税理士を探す人にこの検索サイトを案内しています。

名簿に分野まで載せられるかは確かめが必要です。ただし、名簿に載っている事務所の情報が、ほかの入口と食い違っていないかは見ておくとよいでしょう。

印を付けた一覧を日付つきで残す

5つの入口のうち、事務所の側からいちばん見えにくいのがAIの入口です。AIは事務所の外での書かれ方も手がかりにすることがあるため、ホームページを眺めても、AIがどう答えるかは分かりません。そのため、相談者の言い方でChatGPTやGeminiなどに実際に聞いてみるしかありません。

一方で、一度聞いただけでは、整えたあとに変わったのかどうかを比べられません。聞き方をそろえて月に1回ほど聞き、答えを日付つきで残しておくとよいでしょう。聞き方や記録のそろえ方は、業者に頼む前の自己診断の手順と同じ形で進められます。

整える入口を選ぶときの材料は、この印を付けた一覧です。 ただし、印を付け終えると、伝わっていない入口が2つ、3つと並ぶこともあるでしょう。そうすると、限られた時間でどれから手を付けるかを決める必要が出てきます。

05次に整える入口を1つに絞る

伝わっていない入口がいくつあっても、次に整える入口は1つに絞るのがよいでしょう。業務の合間に5つを一度に整えようとすると、どれも途中で止まりやすいからです。

さらに、5つの入口は別々のものに見えて、元になる文は共通しています。分野の困りごとに事務所がどう答えるかを書いた文を先に作っておけば、ほかの入口にも同じ文を使えます。

最初に相談した相手から選ぶ

一覧で「伝わっていない」に印が付いた入口に、次の3つの問いを上から順に当ててみてください。1問目は、得意分野の相談者について書き出した「税理士の前に誰に相談したか」の欄がそのまま使えます。

  • 得意分野の相談者が最初に通る入口か —— 書き出した欄に他士業や金融機関が並ぶなら紹介の入口が、検索やAIが並ぶならその入口が先です。
  • 事務所の手で直せるか —— ホームページは事務所が直せます。紹介サイトの登録文やGoogleマップの情報も、登録の形やプロフィールの管理権があれば事務所が直せます。他士業の説明やAIの答えは、直接は書き換えられません。
  • 費用がかかるか —— 広告や有料の掲載に頼らず、事務所の時間だけで整えられる入口を先にします。

3つを当てても複数の入口が残るときは、1問目を優先するとよいでしょう。相談者が最初に通らない入口を整えても、分野で探す人の目に事務所が入る順番は変わらないからです。入口ごとの手間や費用をさらに細かく比べたいときは、紹介以外の入口の選び方の比べ方が使えます。

事務所の手で直せる入口に絞ると、ホームページか、紹介サイトやGoogleマップの登録文が候補に残ります。

一方で、1問目で他士業・同業からの紹介が残ることもあります。その場合に整えるのは、紹介者が事務所の得意分野を言葉で説明できる状態です。

たとえば、ホームページに書いた分野の説明のURLを紹介者に送っておく、会ったときに最近扱った分野の相談を一言伝える、といった方法が考えられます。どちらの方法も、渡せる説明の文が事務所の側にあることが前提になります。

ホームページの分野の説明が土台

絞った入口がどれであっても、最初に書くものは同じです。当社で、別の質問として「紹介頼みの税理士事務所が、ホームページやネット経由で新しい問い合わせを増やすには、まず何から始めればいいですか?」とGoogle AI Overviewに聞いて検証してみました。答えの一部は次のとおりです。

Google AI Overview 2026/10/16 に「紹介頼みの税理士事務所が、ホームページやネット経由で新しい問い合わせを増やすには、まず何から始めればいいですか?」と聞いた答え(抜粋)

分野を並べるだけの書き方では、探している人に素通りされると答えています。

AIは、分野名を並べただけの書き方では相談者に素通りされる、と答えました。これもAIがこう答えたという記録ですが、分野名だけでは足りないという点は、5つの入口を表で並べたときの読み取りと一致します。

紹介サイトの登録文も、Googleマップの説明文も、他士業に伝える一言も、短く書く場所ほど元になる説明が要ります。どの入口でも、分野の困りごとに事務所がどう答えるかを書いた文が元になります。 そのため、ホームページに分野の説明を書いておくことが、ほかの入口の土台になります。

ただし、ホームページの記事を量で増やす必要はなく、得意分野の相談者にふだん説明していることを、短くても事務所の言葉で書くほうが積み上がります。まずは、絞った入口に向けて、分野の困りごとへの事務所の答え方を3〜4行で書き出してみてください。

たとえば相続なら、「家族が亡くなったあと、何から手を付け、どの順番で誰に相談すればよいか」に、事務所としてどう答えているかを書きます。医療機関なら、開業や承継を考え始めた人が、準備の段階で税理士に何を相談できるかに答える、という形です。

1行目に相談者の困りごとの言葉、2〜3行目に事務所の答え方、最後に扱ってきた相談の種類、という順にすると、短くても分野の詳しさが伝わりやすくなります。

書き出す前に広告の決まりを確かめる

書き出した文に「相続専門」「医療に強い」と添えたくなるかもしれません。ただし、税理士の広告には税理士会の決まりがあります。日本税理士会連合会が各税理士会の綱紀規則のひな形として示している「綱紀規則(準則)」には、広告について次の定めがあります。

会員は、自己の業務について、本会の定めに反する場合を除き、広告することができる。

出典:〇○○税理士会綱紀規則(準則)

広告はできるものの、本会の定めに反してはならないとされており、細かい決まりは各税理士会の細則で確かめる必要があります。日本税理士会連合会の広告に関する運用指針では、インターネットも細則の対象になる広告の方法に挙げられています。ただし、確かめられたのは過去に公開された内容のため、今の細則で同じかは所属する税理士会で確かめる必要があります。

そこで、所属する税理士会の綱紀規則と広告に関する細則を手元に用意し、「専門」「強い」といった言い方に決まりがあるか、ホームページや紹介サイトなどインターネット上の表示がどう扱われるか、扱った相談の件数や実績を書くときに決まりがあるか、の3点を見てみてください。読んでも判断がつかない点は、所属する税理士会に問い合わせるのが確かです。

06まとめ

得意分野のお客様が紹介で来ないのは、事務所の努力が足りないからではありません。紹介者の顔ぶれは事務所の側からは選べませんが、入口に書かれている言葉は事務所の手で変えられます。分野の困りごとに事務所がどう答えるかを一度書いておけば、ホームページにも、紹介サイトにも、紹介者に渡す説明にも同じ文を使えます。

まずは、一覧で伝わっていなかった入口を1つ選び、その分野の困りごとへの事務所の答え方を3〜4行で書き出してみることから始めるのがよいでしょう。

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