新患が減ってきたクリニック・歯科医院へ
地図・ホームページ・口コミの役割とAIの見方

開業してしばらくは、受付で「〇〇さんに紹介されて」「近所で評判を聞いて」と言われることが多く、ネットのことを考えなくても予約表が埋まっていった院もあるでしょう。それが今は、近くに新しい院ができ、患者さんがスマートフォンで地図や口コミを見比べてから予約するようになったと感じる場面が増えています。月末に予約表を見返して新患が減ってきたと気づいたとき、何から手を付ければよいのか、と迷う先生も少なくないはずです。
クリニック・歯科医院のネット集客とは、地域で院を探す患者さんに、Googleマップやホームページ、医療ポータル、ChatGPTなどのAIで院を見つけてもらえるように整えることです。この記事では、患者さんが院を探す入口ごとの役割と、AIが院を挙げるときの手がかりを、当社でAIに聞いて検証した答えと厚生労働省の資料をもとに見ていきたいと思います。そのうえで、医療広告ガイドラインの範囲で何から整えるかの順番を、院長の先生が自院に当てはめられる形で示したいと思います。
**新患が減ったからといって、最初に広告やブログを始める必要はありません。**次の順番で進めるのがよいでしょう。
- 患者さんと同じ問いでGoogleとAIに聞き、今の出方を記録する
- 院名・住所・電話番号・診療時間・診療科を、Googleマップ・ホームページ・医療ポータルでそろえる
- ホームページに「どんな症状を、どう診る院か」を書く
- 口コミへの返信とポータルの方針を決める
01新患減は探し方の変化だけが原因ではない
新患が減った理由は、1つとは限りません。患者さんの探し方の変化、近くの開院、院の側の変化が重なっていることが多く、どれが効いているかで手を打つ場所が変わります。そのため、広告などを始める前に、問診票と院名の検索画面で理由を切り分けるのがよいでしょう。
理由を取り違えると、効かない対策から始めてしまいます。たとえば、Googleマップの診療時間が古いままの院が広告にお金をかけても、古い情報を見た患者さんは来院を見送るかもしれません。
減った理由は3つが重なる
Geminiに、歯科医院を開業して数年、紹介と口コミで得てきた新患が減ってきたと相談すると、「知人紹介や近隣の口コミが一巡したタイミングで新患数が落ち込む」ことはよくある、と答えました。
切り分けるときは、次の3つに分けて見るとよいでしょう。
- 患者さんの探し方の変化 —— 紹介を聞いたあとや症状が出たときに、スマートフォンで院を調べてから決める人が増えている。
- 近くの開院 —— 近くに新しい院ができ、患者さんが比べる候補が増えた。
- 院の側の変化 —— 診療時間や休診日を変えたのに、Googleマップやホームページの情報が古いまま残っている。
3つのうち、院がその日のうちに確かめられるのは院の側の変化です。診療時間や休診日を変えた時期を思い出し、受付のパソコンかスマートフォンで院名を検索して、Googleマップとホームページに今の情報が載っているかを開いてみてください。
紹介の患者も院名で確かめる
「うちはまだ紹介で足りている」と感じる先生もいるでしょう。ただし、ネットが関わるのは紹介の外だけではありません。Claudeに、紹介と口コミ頼みのクリニックが新患を増やすには何から始めればよいかを聞くと、「紹介や口コミで来院を決めた人も、多くは来院前に名前で検索して確認します」と答えました。調査の数字ではなくAIの見立てですが、そうだとすると、紹介の数が変わらなくても、検索で確かめた段階で来院をやめる人が出ているかもしれません。
紹介が減ったのか、紹介のあとで来院をやめる人が増えたのかによって、手を打つ場所は変わります。前者なら紹介の外で院を見つけてもらう方法が、後者なら院名で調べたときに出る画面が問題になります。院名でGoogleとGoogleマップを開き、紹介された患者さんが最初に目にする画面を確かめてみるとよいでしょう。
問診票の一行で入口を記録する
問診票は院が自分で持てる記録です。Claudeは同じ答えの中で、問診票に「当院を知ったきっかけ」の欄を足し、効果を比べる土台にすることを勧めていました。
Claudeが挙げた選択肢は「紹介、マップ、サイト、AI、その他」でした。ただし、患者さんが院を探す入口には口コミと医療ポータルもあるため、それらを加えた次の7つにしておくと、あとで入口ごとに見比べやすくなります。
- 紹介 —— 家族や知人から院の名前を聞いた。
- 地図 —— Googleマップなどの地図で見つけた。
- ホームページ —— 院のホームページを見た。
- 口コミ —— 地図や口コミサイトに載った感想を読んだ。
- 医療ポータル —— 地域や診療科で院を探せるサイトで見つけた。
- AI —— ChatGPTなどのAIに聞いた。
- その他 —— 上のどれにも当てはまらない。
欄は問診票の最後の行に「当院を何で知りましたか(いくつでも)」として足し、紹介を聞いたあとに地図も見た患者さんも複数に印を付けられるようにしておくとよいでしょう。空欄のまま出された問診票は、受付で一言聞いて丸を付けてもらうと漏れが減ります。月末に受付で入口ごとの数を数え、予約表の横に書き留めておけば、数か月で、どの入口から来る患者さんが減ったのかを院の数字で確かめられます。
ただし、入口ごとの数を読み解くには、患者さんがそれぞれの入口で何をしているかを知っておく必要があります。
02患者の入口は4つ、それぞれ役割が違う
患者さんが院を探す入口は、Googleマップ・ホームページ・口コミ・医療ポータルの4つに分かれます。ここでいう入口とは、患者さんが院の名前を初めて知ったり、来院を決める前に確かめたりする画面のことです。4つは、見つける・確かめる・比べるという役割がそれぞれ違うため、院は入口ごとに何を伝えるかを分けて考えるとよいでしょう。
なお、ChatGPTなどのAIは、5つ目の入口というより、この4つに書かれた情報をまとめて答える仕組みとして見ると分かりやすくなります。
地図は見つけ、ホームページは確かめる
Googleマップは、近くの院を見つける入口です。「地域名+診療科」で探した患者さんは、地図に並んだ院の場所や診療時間、口コミの数を見て候補を絞ります。一方で、ホームページは、その院が自分の症状を診てくれるかを確かめる入口です。
4つの入口の役割と、院が整えておくことを並べると、次のようになります。
- Googleマップ —— 患者さんが近くの院を見つける。院は院名・住所・電話番号・診療時間・診療科を正しく載せておく。
- ホームページ —— 患者さんが自分の症状を診てくれるかを確かめる。院はどんな症状を、どう診る院かを書いておく。
- 口コミ —— 患者さんがほかの人の感想で院を比べる。院は個人情報や病状に触れない形で返信する。
- 医療ポータル —— 患者さんが複数の院を並べて比べる。院は載っている基本情報が今の院と合っているかを確かめておく。
使い方は一例ですが、この並びを自院に当てはめると、欠けている入口が見えてきます。どこか1つの入口の情報が古かったり食い違ったりすると、比べる候補から外されることもあるでしょう。たとえば、看板と名刺で電話番号が違う店があれば、客はどちらにかければよいか迷います。
口コミとポータルは比べる場所
口コミと医療ポータルは、患者さんが複数の院を並べて比べる場所です。医療ポータルとは、EPARKやCaloo、ドクターズ・ファイルのように、地域や診療科で院を探せるサイトのことです。当社でAIに院の探し方を聞いたときにも、これらの名前が挙がりました。
患者さんが何を頼りに医療機関を選んでいるかは、厚生労働省の調査からも読み取れます。「令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況」の表1によると、ふだん医療機関にかかるときに情報を入手している外来患者の入手先は、「家族・友人・知人の口コミ」が68.4%でいちばん多く、次が「医療機関が発信するインターネットの情報」の28.8%でした。
「情報を入手している」者について、情報の入手先別にみると、外来、入院ともに「家族・友人・知人の口コミ」が最も高く、外来で68.4%、入院で66.7%、次いで、外来では「医療機関が発信するインターネットの情報」が28.8%
※この調査は全国の一般病院を利用する患者が対象で、診療所(クリニック・歯科医院)の患者は含まれません。
それでも、人から聞く評判がいちばんの情報源であることと、院のホームページなど院が自分で発信する情報を見る人も一定数いることは分かります。調査でいう口コミは家族や知人の評判ですが、ほかの人の感想を重く見る点はGoogleマップの口コミとも共通しているため、地図の口コミへの返信やポータルに載る情報も、院が比べられる場面として整えておくとよいでしょう。
予約までは入口を行き来する
4つの入口は、患者さんの中でつながっています。たとえば、地図で近くの院を見つけ、口コミで比べ、ホームページで診療内容を確かめてから電話で予約する、という流れです。紹介で名前を聞いてすぐに地図を開く人もいれば、ホームページから入る人もいて、順番は人によって違います。

患者さんは1つの入口だけで院を決めず、いくつもの入口を行き来してから予約します。
患者さんが入口を行き来する以上、1つの入口だけを整えても新患が戻らないことがあります。自院の4つの入口を、患者さんになったつもりで順に開いてみるとよいでしょう。
では、ChatGPTなどのAIは、この4つのどれを読んで院を挙げているのでしょうか。
03AIは4つの入口の情報で院を挙げる
AIに近所の院を聞いたとき、AIは院を直接見に行くわけではなく、ネット上に書かれた情報をもとに候補を挙げます。当社で患者さんの立場の問いをGeminiとClaudeに聞いて検証してみたところ、どちらも手がかりとして地図・口コミ・ホームページ・医療ポータルの4つを挙げました。
ただし、AIの答えは、各社の仕組みを外から確かめたものではありません。Claude自身も、検索せずに一般的な仕組みとして答えていると断っています。それでも、AIが見ているのはホームページがあるかどうかではなく、入口ごとに何が書かれているかだと考えています。
患者の問いでAIの手がかりを聞いた
聞いたのは、「近所で初めて行く歯医者やクリニックを探しています。AIにおすすめの院を聞いたとき、AIはどんな情報(地図、口コミ、ホームページ、医療ポータルなど)をもとに候補を挙げているのですか?」という、院を探す患者さんの立場の問いです。下の図は、Geminiの答えのうち、院にとって大事な言葉に印を付けたものです。

Geminiは、地図・口コミ・ホームページなど複数の情報を合わせて候補を選ぶと答えた
図の①で、Geminiは、ネット上に「正確かつ豊富な情報」があるかを見て選んでいると答えています。②のとおり、見ているのは1つの情報源ではなく、複数を合わせたものです。③のGoogleビジネスプロフィール(Googleマップに載る院の情報)では診療科目や写真が、④のホームページでは診療内容や強みの分野が挙がっています。答えの続きでは医療ポータルも情報源に挙がり、EPARK、Caloo、ドクターズ・ファイルの名前が出ました。
AIの種類で読む先が違う
同じ問いへのClaudeの答えは、冒頭で「私はここで検索していません。以下は一般的な仕組みに基づく整理で、各社AIの内部ロジックは非公開です」と断ったうえで、AIの種類ごとに情報源が違うと整理していました。要点を短くまとめると、次のとおりです。
- 地図・検索と連携しているAI(Google検索のAI要約など) —— Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)の情報、口コミ、検索結果のWebページを見る。
- Web検索機能つきのチャットAI(検索モードのChatGPTなど) —— 検索エンジンで上位に出るページ(公式サイト、医療ポータル、ニュース、口コミ記事)を見る。
- 検索なしのAI —— 学習済みの知識だけで答えるため、地域の小さな院をほとんど知らないこともある。
Claudeは、「近所」の質問に強いのは位置情報や地図データを使えるタイプだとも答えています。そうすると、地図や検索を使う種類のAIにとっては、Googleマップの情報と口コミ、検索で出る公式サイトとポータルが院の手がかりになりやすいでしょう。
名前が出ない理由は1つではない
AIに聞いて自院の名前が出ないとき、理由は1つとは限りません。患者さんが指定した場所から遠い、口コミの件数が少ない、地図やポータルに院の情報が無い、入口ごとに住所や診療時間が食い違っている、ホームページに診療内容が書かれていない、といったことが考えられます。Claudeも、地図データの材料として、距離・診療時間・電話番号・診療科・写真・口コミの件数と評価を挙げていました。
この中には、距離のように院が変えられないものと、院が変えられるものが混ざっています。院が手を付けられるのは、入口ごとの情報をそろえることと、ホームページに院の診方を書くことです。

AIは4つの入口に書かれた情報をまとめて答えるため、どこかが欠けたり食い違ったりすると、院の姿が伝わりにくくなります。
AIが4つの入口の情報をまとめて答える以上、院の側も同じように4つの入口を見比べ、患者さんと同じ問いで実際に聞いてみると、自院がいまの探し方に乗れているかを確かめられます。そのためには、どんな問いで聞き、何を記録しておくかを先に決めておく必要があります。
04自院が乗れているかは同じ問いで確かめる
自院がいまの探し方に乗れているかは、患者さんと同じ問いをGoogleとAIに聞き、出てきた画面を残しておくと確かめられます。あわせて基本情報を入口ごとに見比べると、どの入口から手を付けるかが決まります。冒頭に挙げた順番では、ここが①にあたります。
対策の前に確かめるのは、足りないところが院ごと・入口ごとに違うためです。
3通りの問いで今の出方を残す
Claudeは、紹介と口コミ頼みのクリニックが何から始めればよいかという問いに、広告やブログより前の「ステップ0」として、「「地域名+診療科」「駅名+症状」「院名」で、Googleと各AIに聞いてみて、自院がどう出るか、何と書かれているかを見ます」と答えました。歯科医院なら「(地域名) 歯医者」「(駅名) 歯が痛い」のように、院の診療科と患者さんの言い方に置き換えて使えます。
まずは診療が終わって受付が落ち着いた時間に、院長か受付の担当者が院のパソコンでGoogleマップとChatGPTなどのAIを開き、3通りを1つずつ聞いてみてください。出てきた画面はスクリーンショットで撮り、年月を名前にしたフォルダにまとめて保存しておくとよいでしょう。月末に問診票の数を数えるときに同じフォルダを開けば、整えた効果をあとで比べられます。
基本情報は開設届の表記を基準に見比べる
次に、院名・住所・電話番号・診療時間・休診日・診療科が、入口ごとにそろっているかを見比べてみましょう。その前に、Googleマップに載っている院の情報を、院のGoogleアカウントで管理できているかを確かめておくとよいでしょう。管理の手順は、Googleのヘルプで確かめてください。
「診療時間の表記くらいで、患者さんの動きが変わるのか」と思う先生もいるでしょう。ただ、Geminiは「正確かつ豊富な情報」があるかを見て院を選ぶと答えていました。Claudeもクリニックの開業準備についての問いに、院名や住所などを「保健所への開設届と同じ表記で確定します」と答え、院名の混在や全角と半角の混在、ビル名の有無といった、見た目では気づきにくい揺れまで例に挙げています。開設届の表記を基準にすると、どの入口に合わせるかで迷わずに済みます。
開設届の控えと次の表を印刷して受付に置き、各入口を開きながら、食い違っていた入口に印を付けてみてください。
入口ごとの基本情報の記録表
| 項目 | 見るところ | 食い違った入口に印 |
|---|---|---|
| 院名 | 「クリニック」「医院」など呼び方の違い | □地図 □HP □ポータル □他の地図 |
| 住所 | ビル名・階数の有無、全角と半角 | □地図 □HP □ポータル □他の地図 |
| 電話番号 | 古い番号、予約用と代表の混在 | □地図 □HP □ポータル □他の地図 |
| 診療時間 | 変更後の時間が載っているか | □地図 □HP □ポータル □他の地図 |
| 休診日・臨時休診 | 祝日や臨時の休みの反映 | □地図 □HP □ポータル □他の地図 |
| 診療科 | 同じ言葉で載っているか | □地図 □HP □ポータル □他の地図 |
| 確かめた日 | 年月日を書く |
※ポータルを複数使っている院は、サイトごとに1枚ずつ使うと、どこを直すかが分かります。
印が付いた入口は、このあと基本情報をそろえるときに直す先になります。食い違いが無くても確かめた日を書き、記録表は画面を保存したフォルダに一緒に入れておくと、次に見直すときの起点になります。
出方の違いから足りないものを見分ける
3通りの問いの画面と記録表を合わせると、足りないものの見当がつきます。院名で聞いても出ないなら、地図やポータルに院の情報が無いか、入口ごとに食い違っていることが考えられます。院は出るものの診療時間が古いなら、どこかの入口の更新が止まっています。どちらも、基本情報をそろえることで手が届きます。
一方で、「地域名+診療科」で院の代わりにポータルや他院が挙がるときは、理由が1つとは限りません。患者さんが指定した場所からの距離や口コミの件数のように、院がすぐには変えられないものもあれば、ホームページに院の診方が書かれていないことのように、院が変えられるものもあります。挙がった他院やポータルの画面に何が書かれているかを見ておくと、院のホームページに足りない言葉の手がかりになります。ただし、書き足す前に知っておきたいのは、医療の情報には書いてよい範囲の決まりがあることです。
05書いてよい範囲は医療広告ガイドラインで決まる
院のホームページや口コミへの向き合い方には、医療広告ガイドラインという決まりがあります。医療広告ガイドラインとは、厚生労働省が、医療機関の広告で書いてよいこと・いけないことを示した資料です。
AIの答えは一般的な集客の考え方をもとにつくられていて、この決まりを踏まえているとは限りません。そのため、AIや業者の勧めは、厚生労働省の資料と照らしてから使うのが確かです。
ホームページも決まりの外ではない
ホームページは院が自由に書ける場所に見えますが、決まりの外にあるわけではありません。厚生労働省は「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」で、ホームページの書き方を例で示しています。患者さんの体験談については、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」に次の一文があります。
患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談は、今回新たに規定された広告禁止事項です。
この一文に照らすと、治療の内容や効果についての患者さんの感想を、院のホームページに「患者さんの声」として載せるのは避けるのがよいでしょう。事例解説書(日本医師会のサイトに載っている令和6年3月の第4版)も、「医療機関にとって便益を与える感想等を取捨選択し掲載するなどして強調することは、虚偽・誇大にあたるため広告できない」としています。
医療ポータルも、決まりと無関係ではありません。厚生労働省の検討会の資料「医療広告に関する前回の議論の整理(案)」は、検索結果のページについて「特定性・誘引性がある場合には、広告に該当します」としています。案の段階の資料ですが、ポータルに載る院の情報も、決まりと照らしておくのがよいでしょう。
※ガイドラインとQ&Aは改正が重ねられているため、読む版は厚生労働省「医療法における病院等の広告規制についての更新履歴」のページで確かめてください。
口コミのお願いはAIとQ&Aで答えが違う
口コミは、AIの答えと公的な資料で言うことが分かれる場面です。Geminiに、紹介と口コミ頼みのクリニックが何から始めればよいかを聞くと、満足度の高い患者さんに口コミの投稿を頼む方法を勧めていました。
Geminiは、「星5で割引」のような見返りを渡すこと(インセンティブ付与)は「NG」としつつ、見返りが無ければ「お願いすること自体は問題ありません」と答え、見返りの有無で線を引いています。一方で、厚生労働省のQ&AのQ1-18は、次のように書いています。
医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼した場合は、当該体験談には誘引性が生じます。一方で、医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された体験談が、医療機関からの影響を受けずに患者やその家族が行う推薦に留まる限りは、誘引性は生じません。
Q&Aは、見返りが無くても、院が肯定的な体験談の投稿をお願いした時点で誘引性が生じるとしています。
AIの答えとQ&Aは、同じことを言っていません。口コミの投稿をお願いする前にQ&Aの該当箇所を読み、迷うときは所属する会や保健所に聞いてみるのがよいでしょう。
自費診療の書き方も原文で確かめる
自費診療の書き方でも、同じことが起きます。インプラントや矯正などの自費診療の相談を増やしたい歯科医院の立場でGeminiに聞くと、「患者は「インプラント単体」ではなく、「ブリッジや入れ歯と何が違うのか」」を比べていると答え、費用や寿命などを並べた比較の表をホームページに載せるよう勧めました。
ただし、費用や治療内容、ほかの治療との比べ方をどう書いてよいかには、医療広告ガイドラインの本文に条件があります。AIが勧めた表をそのまま載せるのではなく、ガイドラインの本文で自費診療の費用や治療内容にかかわる項目を確かめ、迷う表現は所属する会や保健所にも聞いてから載せるのがよいでしょう。
06整える順は基本情報、院の診方、口コミ
院が整える順番は、①患者さんと同じ問いで今の出方を記録する、②4つの入口で基本情報をそろえる、③ホームページに院の診方を書く、④口コミとポータルの方針を決める、の4つです。①は自院の出方を確かめる段で済んでいるため、残るのは②から先です。
この順にするのは、基本情報が食い違ったままホームページに記事を足しても、AIも患者さんも同じ院の情報だと判断しにくく、書いた内容が院の名前に結びつきにくいためです。
基本情報は入口ごとに一字一句そろえる
Claudeは、紹介と口コミ頼みのクリニックへの答えで、「広告やブログ更新の前に、Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)と公式サイトの基本情報を整えること」を結論に挙げていました。直すときは、開設届の控えと印の付いた記録表を手元に置き、Googleマップは院のGoogleアカウントから、ホームページは院で更新するか、更新を頼んでいる先に記録表を渡して、表記を開設届に合わせていくとよいでしょう。Claudeの答えには、次の項目も挙がっていました。
- 診療科のカテゴリ —— Googleビジネスプロフィールのメインカテゴリを、院の診療科にする。
- 祝日や臨時休診 —— 休みが変わるたびに、地図とホームページの両方を直す。
- 写真 —— 外観・入口・受付・待合室などを載せ、どこにあるか、入りやすいかが伝わるようにする。
- ほかの地図 —— Appleのマップなど、Google以外の地図にも同じ情報を載せる。
- 医療ポータル —— 載っている情報が古ければ直す。院が自分で直せるサイトと、運営会社への連絡が要るサイトがあるため、各サイトの案内で確かめる。
この段で、口コミへの返信の最低限のルールも決めておくとよいでしょう。「患者さんの名前や病状、治療の内容に触れない」という一行を受付の手順書などに書いておくだけでも、返信のぶれを防げます。
ホームページに院の診方を書く
基本情報がそろったら、ホームページに「どんな症状の患者さんを、どう診るのか」を院の言葉で書くのがよいでしょう。ここでいう院の診方とは、症状を聞いてから何を確かめ、どう説明して治療の方針を決めるかという、院の判断の進め方のことです。たとえば、「歯がしみる」と来た患者さんに、最初にどこを見て、どんな説明をしてから方針を相談するのかを、診療の流れとして書く形です。
書く理由は、患者さんが知りたい情報と、実際に手に入る情報に差があるためです。古い調査ですが、2008年の病院の外来患者を対象にした厚生労働省「平成20年受療行動調査」では、病院を選ぶときに必要とした情報として「医師などの専門性や経歴」が48.5%といちばん多く、そのうち実際に手に入れられたと答えた人は14.7%でした。医師の側の情報が求められているのに届いていないという差は、院が自分の言葉で書く理由になります。一般的な治療の説明を増やすより、短くても院の判断が入ったページのほうが、AIにも患者さんにも院を選ぶ手がかりになるでしょう。
口コミの言い回しとポータルの方針を決める
院の診方がまとまったら、②で決めた返信のルールに、院の考えを短く伝える言い回しを足していきます。たとえば、説明が丁寧だったという口コミには、院が説明で大事にしていることを一文で返す、といった形です。ただし、投稿した患者さんが特定されるような事情や、治療の効果には触れないようにしてください。
一方で、医療ポータルは、載っている基本情報が正しいかを②で確かめたうえで、載るならどの患者さんに見つけてもらうためかを決めておくとよいでしょう。検索結果のページが広告にあたりうることも踏まえ、載るべきかどうかは、予約の取り方や来院する患者さんの層と照らして院ごとに判断するのが確かです。
次の記事は税理士向けのものも含みますが、Googleビジネスプロフィールの持ち主の確認や、AIへの問いを毎月同じ条件で記録する手順は、院でも同じです。
07まとめ
紹介と口コミで回してきた院の新患が減ったとき、患者さんの探し方の変化は理由の1つですが、それだけで決まるわけではありません。
そのため、広告や記事の量を増やす前に、今の出方を記録し、入口ごとに基本情報をそろえ、医療広告ガイドラインの範囲で院の診方を言葉にする順番で進めるのがよいでしょう。どこまで整ったかは、最初に残した画面と見比べれば院の側で確かめられます。
次の一歩として、「地域名+診療科」「駅名+症状」「院名」の3通りで今の出方を確かめ、業者を探す前の自己診断のつもりで記録を残すところから始めてみるとよいでしょう。


